二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 忘れな草【イナズマ短編】ルカぴょんさん・春華さん完成 ( No.28 )
日時: 2011/03/11 20:04
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: ZgrHCz15)

+パーティやろうぜ+

 うららかな日差しが降りる3月のある日。炎愁たちはおひさま園のとある部屋を占領し、パーティーをしていた。占領、と言う表現はあまり的確ではないか。
 おひさま園所属の南雲と涼野が、小学校の卒業パーティーをやりたいから部屋を貸せ、と瞳子に頼み込み、部屋を貸し出してもらった。それから二人は、仲がよい蓮と炎愁を連れてきて、楽しくぎゃあぎゃあとやっているわけだ。

 部屋には丸いテーブルが置かれ、4人はそれを囲んで座っていた。机の上には、ポテトチップスやクッキーなどが並べられた皿。2リットルのオレンジジュースがはいたペットボトル。鯨が海水を飲むように、がばがばとジュースを飲む南雲のせいで、もう二本目。しかも残量は半分ほどしかない。

「もうすぐオレらも中学生か」

 南雲がポテトチップスを掴んで口に放り込んで、食べながら言った。かなり行儀が悪い。足を崩している3人に比べ、足を投げ出していることからもそれはわかる。
 それを聞いた南雲の向かいに座る涼野が唇を持ち上げ、前髪を人差し指でさっと払って、嘲笑の表情を作る。

「ふん。晴矢のような低脳でも、中学生になれるとは驚きだな」

「風介、言いすぎだ。晴矢は十分頭がいいよ」

 涼野の左隣に座る蓮が、すぐに場を取り繕う。おかげで南雲は涼野を睨みつける程度で済ませた。蓮はどうにか二人の衝突を避けられたことにほっと安堵のため息を漏らすが、彼は炎愁の行動を見てはいなかった。南雲の左隣に座る炎愁は、肘で南雲を小突くと、

「風介の言う通りだぜ。おまえは小学校からやり直すべきだと思うな」

 からかう調子で言い放った。どうやら涼野の言葉に調子に乗り、南雲をからかっているようだ。熱くなりやすい南雲は炎愁に肘で小突かれるたび、金色の瞳をぎらぎらと輝かせる。目が釣りあがり、唇がわなわなと震える。
 蓮と涼野は、ああまたか……と言わんばかりの呆れた表情で二人を眺めていた。
 しばらくして南雲は急に立ち上がり、炎愁ににじり寄る。瞳を獲物を狙うハンターのごとくぎらつかせる姿はなかなか迫力があるものだが、蓮程怖くはないため、炎愁は怖気づいていなかった。

「おい炎愁。さっきから黙って聞いていれば、ごちゃごちゃと抜かしやがって! 小学校レベルの勉強ができないお前に言われたくねーなぁ」

 南雲が挑発し、炎愁は勢いよく立ち上がって、きっと南雲を睨む。二人の間には緊張した空気が張り詰めている。すぐに一悶着起こしそうなピリピリしたものだ。
 そんな中でも蓮と涼野は、オレンジジュースを飲みあっていた。まるで他人事のように南雲と炎愁が対峙する様子を眺めている。

「はぁるやぁぁ! 今日と言う今日は決着付けてやるぅ!」

「おまえは算数できないだろ!」

「嘘付け!」 

 言うが早いか、その瞬間戦いの火蓋は切って下ろされた。ぎゃあぎゃあとわめき、怒鳴り、がなる二人。
 言い合いのレベルも全く同じもので、言われた言葉をひたすらおうむ返しに言う、何ともわかりやすい内容だ。興奮して二人の声がだんだん大きくなっていくので、見物人にはいい迷惑だ。蓮と涼野は両手で耳を塞ぎ、うるさそうに二人を見ていた。

「また始まったな! 炎愁と晴矢の喧嘩」

「と、言うか決着って何の意味かな!?」

 小さい声だと、南雲と炎愁の声に負けてかき消されてしまうので、蓮と涼野は大声で叫びあった。
 と、急に静けさが戻ってくる。南雲と炎愁は互いに背を向けると、南雲は涼野の前に、炎愁は蓮の前にそれぞれ立つ。

「おい、風介。オレと炎愁だったら、オレの方が頭いいよな!?」

 確認するように南雲は涼野に聞いて、

「おい、蓮! 晴矢と俺、どっちがあたまいいか答えろぉお!」

 炎愁はほとんど怒鳴るようにして蓮に問いかける。大人しい蓮は怯むかと思いきや、めんどくさそうにため息をついた。静かに首を振ってほとんど投げやりに答えた。

「わかんない。知的にクイズ対決でもしてみれば?」
「さすが蓮。妙案(みょうあん)だな」

 涼野はひざ立ちになって蓮のそばに近寄ると、肩に手を置いた。
 蓮は涼野に褒められて嬉しいのか、にこやかになっている中、南雲と炎愁は同時に顔を見合わせた。そして、全く同じタイミングで首をかしげる。どうやら言葉の意味が分からないらしい。
 涼野と蓮も顔を見合わせ、こいつら大丈夫か? と言わんばかりの顔で二人を交互に見やった。蛇足だが妙案=非常によい考え。すばらしい思いつき。名案。

「「みょうあん?」」

 二人は同時に呟いて、しばらく考え込み——先に納得したように手を叩いたのは南雲だった。炎愁は、まだうんうんと唸っている。

「風介、蓮をけなしてどうするんだよ」
「そうだぞ!」

 南雲が涼野に呆れるように言って、炎愁は涼野を睨む。
どうやら二人とも意味を理解していないらしい。炎愁は南雲の言葉に同調しているだけのようだ。妙=変な、とでも解釈をしているのだろうか。蓮は苦笑して、涼野に顔を向ける。

「先が思いやられるね」

「そうだな」

 あっさりと涼野が頷き、南雲と炎愁は雷に打たれたように固まる。が、すぐに動いた。南雲と炎愁は前につんのめりそうになりながら、涼野と南雲の正面に立つ。二人とも、片足を机の上に乗せ、必死に弁明する。
 炎愁は拳をふるって必死に熱弁。

「ま、待ってくれ! かけざんでは、俺に敵う男は居ねえ。1〜3の段までならすらすら言えるぜ!」

「なんで9の段までいえないの!?」

 蓮が悲鳴に近い叫びを上げ、その横で涼野はのんびりとコップを傾けていた。喧嘩にはまるで興味のない様子である。
 炎愁の言葉を聞き、南雲は勝ち誇った顔をした。唇を持ち上げ、炎愁に挑発的な笑みを見せる。机に置いた足に力を入れたのか、机がきしむ音がする。

「残念だったな炎愁。オレは去年から必死に勉強したから5の段までいえんだよ」

「あれ、かけざんって9の段まで低学年で習わなかったっけ?」

 口をあんぐりと開けて蓮が南雲に確認するように聞くと、南雲は黙った。炎愁も口を閉じた。
 涼野がコップを机の上に置いた。短く鼻を鳴らすと、あざ笑うような顔で南雲をからかう。

「無様だね……晴矢。私なら九の段などすらすらだ。9×1=8、9×2=7……」

「…………」

 蓮は頭を抱えて俯いた。なんでみんな勉強苦手なんだよ、と心の中で突っ込む。蓮の明らかな反応を見て、涼野は自分が間違えていることを悟った。珍しく目を大きく見開き、呆然としている。南雲と炎愁は机から足を下ろして、足を崩して床に据わり、二ヤつきながら、蓮を見た。二人は図ったように、声を揃えて、

「「蓮、中国の首都はどこだ?」」

 愉快そうに聞いた。蓮は反射的に、

「南京ダック!」

 答えて、南雲と炎愁は爆笑した。「馬鹿だな蓮!」と南雲が叫び、炎愁は「俺でもわかるよ。首都は北京だぜ!」と蓮をへこませる一言。二人は、床にうつ伏せになり、身悶えて転がったり、床をバシバシ叩いていたりする。二人の大きな笑い声に蓮は怒りで顔を赤くしながら、冷静な涼野に助けを求めようと目を向ける。涼野は、蓮に背を向けていた。肩が小刻みに震えている。

「……風介?」

 蓮は様子が気になって、涼野の前に回りこむ。今にも笑いだしおうな顔だ。目は細められ、口には手を当てている。肩が小刻みに震えているのは、必死に笑いをこらえているせいだったようだ。しばらくは持っていたが、蓮と目があった瞬間、涼野はついに噴出した。頭を前に少し倒し、腹を両手で抱えながら、涼野にしては大きな声で笑い始める。

「れ、蓮……も、もう少し……学ぶべき……だな」

 笑っているせいで声を震わせながら、涼野は口を開く。言い終わると控えめに笑い始めた。南雲と炎愁は、「はらいてー!」と大声を出しながら、のた打ち回っている。三人の笑い声が、蓮の心に突き刺さっていく。蓮はやけくそになり、涼野のコップをぶんどると、残っていたオレンジジュースを一気に飲みほした。

 
「どうやら、私たちは誰も進級できるほどの学力を持ち合わせてはいないようだ」

 ひとしきり笑い終わった涼野が言った。顔はいつもの無表情に戻っており、落ち着きを取り戻したようだ。蓮の向かいに座る南雲と炎愁は、まだ少しだが笑っている。

「へ、へーきだよ! 僕は中学でも頑張るから」

 蓮はそっけなく言って、炎愁はすくっと立ち上がった。

「ところで、おまえらに言いたいことがあるんだ! ありがたい言葉だから聞けよ!」
「特別に、この南雲晴矢さまが聞いてやるぜ」

 南雲は仕方なさそうに身体を炎愁の方に向け、

「相変わらず晴矢は上から目線」
「本当に晴矢は放漫(ほうまん)な人間だな」


 苦笑いをする蓮はひざ立ちになって、涼野の横に座る。涼野はちゃっかり南雲の悪口を言って、南雲は涼野の方に身を乗り出した。蓮が仲裁に立って二人を渋々分かれて、炎愁のほうに向き直る。

「俺、お前らに会えてよかった! これから違う道を歩もうとも、俺達はずっと仲間だ!」

 南雲と涼野と蓮は、3人で顔を見合わせると、にっこりと柔らかい笑みを浮かべた。

「仲間、か」

 涼野が感慨深げに呟き、

「あったりめーだろ」

 南雲は当然そうに胸を張る。

「そうだね。気づいたら、僕たちはずっと一緒にいた。中学に言ってもよろしくね、晴矢、風介、炎愁」

 蓮は、改めて仲間の存在を確認するように4人に順々に声をかけた。
 それを確認すると、炎愁も明るく笑い、宣言する。

「よっしゃー! じゃあ、俺たちの中学生活の前祝いに乾杯しようぜ!」

 炎愁はペットボトルの蓋を外して掴むと、南雲、涼野、蓮のコップにジュースを注いでいく。蓮のコップにジュースが注がれると、南雲、涼野、蓮は自分のコップを持って立ち上がる。最後に炎愁が自分のコップにジュースを注いで立ちあがった。4人はコップを頭の上まで持ち上げる。

「俺たちの未来を祈って!」

 かんぱーい! と四人が元気に叫び、乾杯した。

(これからもよろしくな!)

〜終り〜
面白いリクなのでノリノリで書きました!結果がノリだけのなんとも意味フナくおりてぃーにww
炎愁ちゃんを3人に上手く絡められたか心配だ;;
林檎さん、炎愁ちゃんをかなり勉強が苦手な設定にしてすいません。もう包丁でも鉈でも何でも受けます!
そしてゆにめもPsのトークロイド漫画を一部参考にしましたwwニコニコ面白いです。
晴矢とは同レベルライバルで、互角(?)なライバルである風に演出してみました。蓮と涼野は呆れたように見ているが、それを楽しんでいるって感じでww

リクありがとうございました〜!いつでもいいので、ご感想をお聞かせ願います♪