二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 忘れな草【イナズマ短編】MiNiさんリク完成。リク受付中^^ ( No.39 )
- 日時: 2011/04/02 13:12
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 8gvA/W.A)
「ついたよ」
白恋中学校から歩くこと十分くらい。士郎が案内してくれたのは、少し高い丘。いったい士郎は何がしたいのかな。けれど、そこについた途端、私の頭から疑問は消え去ってしまう。どうしてか。そこは、早くも春の世界になっていたから。
雪は完全に溶け、辺りは一面、鮮やかな緑。その中にたっくさんの明るい黄色が映えている。たんぽぽ。さっき白恋中学校で見たものと同じものが、あちこちに群生している。ここはたんぽぽ畑みたい。緑とのコントラストが綺麗。風が吹くたびにいい香りが辺りを包み込み、たんぽぽぽが音を立てて揺れる。時々、花弁が舞い上がっていた。
「桃ちゃん、ちょっと後ろを向いていてね?」
「う、うん」
夢のような世界に心を奪われていると、士郎がたんぽぽ畑の中を歩き始めていた。
追いかけたいけれど、後ろを向いてって言われたからしょうがないな。私は戸惑いながら返事をし、後ろを向いた。けれど士郎が何をやっているのか気になってしまう。ちょっとだけなら、見てもいいかな……?
「こっちを向いちゃダメだよ!」
私の心を読んだかのように、士郎の念を押す声が聞こえた。びくっと肩を震わせた私は、自分を叱咤した。士郎がダメって言うから、後ろを向いちゃダメ。我慢しなくちゃ。
「もう、いいよ」
しばらくすると士郎の声がした。かなり近い。いつ、戻ってきたのかな。
私はゆっくりと振り向き、思わず声を上げてしまった。
「わあっ」
士郎の両手には、たんぽぽで作られた花冠が握られていた。多くのたんぽぽが編みこまれていて、すっごく立派なものだ。よくよく見ると、士郎の手は土まみれだ。苦労して私のために作ってくれたと思うと、恥ずかしい。熱が鉄を伝うように、身体中に熱さが広がっていくのを感じた。自分で自分を見られたなら、身体中が赤くなっているに違いない。ふっと、士郎を見ると楽しそうに笑っている。あれ、そういえば士郎って花冠を作れたっけ?
「ボクから桃花へのプレゼントだよ」
聞こうと思ったけれど、聞けなかった。
士郎が私の頭に、たんぽぽの花冠をそっと置いてくれたからだ。見たときはとても大きいと思ったけれど、私の頭にぴったりとはまった。なんだかお姫様になれたみたい。
「ど、どう? 似合うかな?」
勇気を出して士郎に問うと、士郎は微笑した。
「すっごくよく似合っているよ。桃花は、お姫様みたいだね」
その笑顔を見ていると、本当に似合っているみたいと安心できる。やっぱり士郎の笑顔は、”安心”の魔法だ。
贅沢を言うと、ジャージ姿なのが残念。私の服が制服なら、もう少しお姫様らしくなれた気がする。
「わ〜! 桃花ちゃん、お嫁さんみたい!」
そこへ聞き覚えのある明るい声が聞こえた。士郎は声の方に微笑みかけたけど、私は驚いて身体を震わせる。この場面を他の誰かに見られたと思うと、とても怖い。笑われてしまう気がする。
けれど、声の方をむいて私は気が抜けたような声を出した。
「じゅ、珠香ちゃん! びっくりさせないでよ」
珠香ちゃんでよかった。身体から力が抜け、ほっとした。
珠香ちゃんは両手を後ろに回しながら、苦笑しながら、軽く私と士郎に頭を下げる。
「えへへ、ごめんね桃花ちゃん。でも、二人が並ぶと、結婚前の新郎新婦みたいに見えるよ」
そう言われて私の身体はますます火照る。改めて横に並ぶ士郎を見上げた。
花冠はきっと花嫁さんが被るベール。さっき、士郎は私の事をお姫様みたい、と言っていたから、自分は王子様のつもりなのかもしれない。その顔立ちでも十分いけるけど、私の視線に気づくと、胸に手を当てて恭しく(うやうやしく)お辞儀をしてくれた。あ、どうも私の考えは当たっているみたい。
「士郎、もしかして私をお嫁さんにしたかったの?」
私が意外な士郎の考えに愕然としながら聞くと、士郎は柔らかい笑みで私の瞳を見て、
「桃花の花嫁姿を見てみたかったんだ」
楽しそうに答えてくれた。声が心なしか弾んでいる気がした。
——今の私は士郎のお嫁さんなんだ。そう感じたとき、嬉しさや羞恥や喜びがいっぺんに込み上げてきて、私はそれを隠すように俯いてしまった。
「は、早く言ってくくればよかったのに」
気持ちを隠すように、早口で反対のことを言ってしまった。ありがとう、って言えばよかった。
ああ、私は何を言っているんだろう。それでも士郎はあったかく笑ってくれるから、ひきづられるように微笑んでしまう。すると珠香ちゃんが、えー!? と驚いたような声を発した
「桃花ちゃん、今気がついたの!? も〜鈍いなぁ。たんぽぽの『花言葉』でわかると思ったのに」
そう言われても、珠香ちゃんが花言葉に詳しすぎるだけだ。私があまり詳しくないことを知っているのに、そんなことを言う。
どういうこと?、とちょっとつんとしながら返すと、珠香ちゃんは、片手で士郎を示し、
「わたしが、吹雪君に頼まれて花冠の作り方を教えたんだよっ! ちゃ〜んと花言葉も考えてね」
それから私の耳にそっと耳打ちをした。
たんぽぽの花言葉の意味はね、『真心の愛』。吹雪くんが桃花ちゃんの事を大好きだよってことだよ。
珠香ちゃんが耳を離すと、私は頭に載った花冠にそっと触れた。士郎の思いが込められた花冠。思いはもらったら、返さなくちゃね。
私は士郎と向き合うように立つと、少し離れた。助走をつけて、そのまま士郎の下に跳んだ。
「ありがとう、士郎!」
士郎は思いを、私を受け止めてくれた。
サッカーをやっているだけあり、運動神経がいい。ゆったりと両腕を広げると、私の身体をしっかり抱きしめてくれる。士郎の腕の中は、とても暖かくて。安心できた。
「お転婆なお嫁さんだね」
苦笑いする士郎。でも、優しく抱きしめてくれる。
将来もこうなのかな、と未来の自分と士郎が抱き合う姿を想像して。微笑ましい光景に思わず独りでに笑みがこぼれてしまった。
〜FIN〜
まずスライディング土下座していいですか。
gdgdな話で申し訳ありません。そしてしずくが暴走しまくってすいません。
桃花ちゃんと吹雪君の話を妄想していたらニヤニヤしすぎて、気づいたら2ページに分ける自体に陥っていました←大切な場面では名前で呼ばせていただきましたw桃花ちゃん。
しずくの低クオリティだと、甘さがここまでマイルドになっちまいますw桃花ちゃんが可愛くかけているといいのですがorz
ではではリクエストありがとうございました^^いつでもいいので、感想を聞かせてくださると嬉しいです^^