二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 忘れな草【イナズマ短編】リク受付中♪ ( No.73 )
- 日時: 2011/05/14 12:18
- 名前: しずく ◆15.La6p072 (ID: PODBTIS5)
真夜中のヒト騒動
深夜、俺はあまりの暑さに目を覚ました。窓の向こうに星が瞬く空と、黒く立つ木立が見えた。
キャラバンの中はエアコンが利いているはずなのに、かなり熱い。それは、今キャラバンが「沖縄」にいるせいなんだろう。沖縄は一月でも泳げるくらいクソ暑い。ジャージを着たまま寝たせいか、シャツが汗で肌に張り付いていて気持ち悪い。全身も熱さによる不快さと汗による冷たさで覆われていて、なんともいえない気分だ。とにかく、身体にこもった暑さを逃すため、俺はジャージを脱いだ。その時、だった。……身体の下のほうに”何か”が溜まっている。のを感じた。それは一刻も早く外に出たいと叫ぶ。荒れる。腹の下で強く訴えてくる。だあ、ここでは無理だと俺は何とか出たがる”何か”を抑えつける。
”何か”を出しに行こうと、俺は席を立って——窓の外を見た。俺が行きたい場所はすぐ目の前であるが、何せ外は暗い。そして、ふくろうの声がおいでおいでと誘うように、暗い木立の中から聞こえてきた。俺は”武者震い”をした。全身があわ立ち、未知の恐怖に心臓が”脈打つ”。ひ、一人で行ってもいいが、もう一人くらい連れて行ってもいいだろう。
俺は後ろを振り向くと、音を立てないようにキャラバンの一番後ろの座席に近づく。壁山が舟をこいでいる。その横——俺から見て右側に身体を丸めて寝ている木暮がいる。俺が近づいた音に反応したのか、オレンジの瞳がぱっちりと開いた。
「ヒカル、どうしたんだ?」
木暮は瞳を擦りながら、眠そうな声で口を開いた。ついでに欠伸も一つ。
「木暮。俺と一緒に夜の散歩をしようぜ?」
俺が誘ってやると、木暮は口角を嫌らしい角度で持ち上げた。俺の網膜がおかしくなきゃ、暗闇の中、オレンジの瞳がはっきりと輝いているように見えるな。顔まで嫌らしく歪んで、胡坐を組んだ。顎の下に手を当てる。
……いつもの意地悪な笑みだ。見ていて腹が立つような。悔しいような。木暮のやつは俺の意図に気づいたとでも言うのだろうか。
「うっしし〜。トイレ行くのに、一人じゃ怖いんだろ」
「俺に怖いものなんてないんだよ!」
木暮に馬鹿にされるのが悔しくて。俺はそっくり返りながら、かっこよく言い返した。足が震えている気がするけど、それは”武者震い”だ。
「ふ〜ん」と木暮は別段反応もせずに、座席から飛び降りると、俺の脇を通り抜ける。そして俺から少し離れた場所で立ち止まり、顧みて、
「じゃあ、ついていってやるよ」
木暮の性格がそのまま顔に表れたような笑みで、偉そうに言った。
キャラバンから少し離れた場所にある公衆トイレ。
お世辞でも綺麗なんていえない。床は黒ずんでいるし、トイレ独特の嫌なにおいが充満していた。うう、気分が悪くなってくる。
電気はついていなかったので灯りのスイッチを探した。木暮が先に見つけたらしく、背伸びをしてスイッチを入れた。それでも中はまだ薄暗い。
俺は木暮に礼を言って個室に入り、鍵を閉める。冷たい便器にすわり、ズボンとトランクスを脱ぎ、用を足した。快感を覚えながらきちんとトイレ後の動作も行い、さあ外に出ようとトランクスとズボンを上げた瞬間——パチンと言う音。途端、辺りが漆黒に包まれる。
周りには誰もいない。そして、俺は閉じ込められている。例えようのない恐怖感と孤独感が俺を支配した。身体中の毛穴が開き、汗が一斉に放出される。混乱の坩堝に立たされた俺は、狂ったように泣き叫びながら、閉まった扉を激しく叩く。
「ぎゃあああああ! 暗いよ……怖いよ……」
「うっしし〜お前、本当に怖がりだな」
からかう調子の声が聞こえ、俺の視界にようやく光が戻ってきた。
俺はほうっと安堵の息を漏らすと、大急ぎで鍵を開け、扉を開く。外では意地悪くにたにたとする木暮が待っていてくれた。
「木暮! 脅かすな!」
「びびるお前が悪いだよっ!」
木暮はそうはき捨て、べーと舌を出すと、一目散に逃げ出した。俺の苦労は、今日も耐えなかった。
(こあくまとこあくまのおはなし)
〜FIN〜
えっと、タイトルにセンスがなくてごめんなさい。本当にタイトルセンスはいつも欲しいと切に願うのですが、どうしてもない、と言うねwヒナ♪さんリク、ありがとうございました^^