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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 【∮序章∮】 疑質と不安 ( No.17 )
- 日時: 2011/04/09 16:54
- 名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: MTFzUrNw)
歌う為だけに生まれた存在。
機械という名を背負い、人間に歌を運んでいく。
そんな〝日常〟に、レンは飽々していた。
人間に歌を運ぶことが、どんな理由を伴うのかまるで判ったものじゃない。
歌うことこそが全てだと言い張るミクの気が知れないのだ。
自分たちにはもっとこう、やれることがあるはずなんだ。歌だけじゃなくて。
そんな主張も、マスターの前では虚しく消えた。
「意味が判らないよ!マスター!!何で歌わなきゃいけないの!?歌う意味が何処に在るのさ!僕たちの存在価値ってそれだけ?そんなちっぽけなモノなの!??ねぇ!!!」
力任せに怒鳴り散らしたあの日。自分の歌に自信が持てなくて、不安を言葉に乗せた、あの日。
周りのボーカロイドたちは只々呆然としていて、その態度がレンの言い分を否定していた。
同じ気持ちだと、思っていた。自分の言ってることは、絶対みんな何処かで考えていたことなんだと。
なのに。
違っていたんだ。そんなこと在るわけなかった。こんなこと思ってる自分が、酷く惨めだと皆が言ってる様に思えて————————
飛び出していた。
リンのあの言い表せぬ冷たい表情に。マスターの困った顔に。皆の戸惑いの視線に…いてもたっても居られなくなって…。
歌に縛られたくなかった。
唯それだけのこと。
それなのに、自分の存在が…否定されなかのように、胸が傷む。
夜の街。街灯が仄かに揺らめくそのなかを、レンは走った。
走って走って、走った。
雨が頬を伝っていく。これが泪だと、レンは気付きもしなかった。
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