二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

【∮第一章∮】 出逢いと意味 ( No.18 )
日時: 2011/04/09 18:11
名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: UXP/rFHj)

悲しい…歌が聴こえた。
それはレンの耳朶をすり抜け、脳に直接浸透した。
気付いたら、寝ていたんだ。
何れくらい経ったかは判らない。それでも蒼空の黒さと重さは一向に変わっていない。
レンは、自分が何処に居るのか理解に数秒間を要した。
掃き溜めだ。ゴミが異臭を放っている。其処に、レンは仰向けで沈んでいた。
猫が自分の左手に鼻先を当てているのが目に入った。
食事かそうでないかを嗅ぎ分けているのだろう。
怖がらせないようにゆっくり手を動かし、頭を撫でてやる。
野良である猫は直ぐになついた。
次の瞬間には、レンのココロを哀愁が染め上げる。
これは、僕なんだ。生きる理由が何処にも無くて街中を迷い、生きる理由を捜している…。
唯何となく生きている人間とは違う、生まれた時から道を決められた、云わば…野良。
レンの頬を何かが滑り落ちる。
雨は上がっているのに、何故…?
それが泪だと認めたくなくて、認めてしまったら自分が崩壊しそうで、レンは無理矢理雫を拭う。
「僕たちの生きている理由って…何なんだろうね…」
悲哀を込めた笑いが、レンの口から問い掛けとして零れた。
もう、何が何なのか、判らなくなってきたんだ…。
歌うだけが生きる意味だなんて…考えたくなかった。
色々な可能性がある時代に、たったひとつだけ決められた理由。
何時から、こんな風に感じるようになったんだっけ?
思い巡らせど、最初からとしか答えが無かった。
そう考えてまた泪が出そうになったとき。
その人はやって来た。
影が迫って、猫が逃げ出す。
「こんなところで、何してるの?」
優しい声がレンに降り掛かり、レンは顔を上げた。
其処に居たのは、優しい面持ちの、男性。
その出逢いが、レンの考えをガラリと変えてしまう。