二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 天駆ける十二星座ポケモン 完結近し! ( No.373 )
- 日時: 2011/07/01 21:45
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: cebg9jtM)
あらすじ
サザンドラの圧倒的な力の前に、ラグラージは歯が立たなかった。
秀夜は初敗北を味わう事になる。
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圧倒的な実力差だった。
そもそも、最初のハイドロポンプを弾き返したところから、薄々その実力差は感じられていた。
「これが…B・S団ボスか…」
途切れ途切れな声で秀夜は呟いた。
ザントは、黙ってサザンドラをボールに戻し、別のボールを取り出した。
「出て来い、ジバコイル」
ザントはUFOのような格好をし、三つの磁石をつけた電気%鋼ポケモンのジバコイルを出す。
「十二星座を回収する。ジバコイル、磁力線だ」
ジバコイルは磁界を操作し、磁力の波を発生させる。
その強力な磁力に反応し、秀夜の手元から十二星座ポケモンが離れていく。
ジバコイルの磁石に十二星座ポケモンの珠が吸い付いた。
「おい、てめ—」
後ろの京がザントに飛び掛ろうとしたが、秀夜はそれを制する。
「もうやめろ。俺は、負けた。それが事実だ」
秀夜は顔を上げた。ザントに、最後の一言を告げる。
「ザント。俺は負けた。だがこれだけは覚えておけ。お前のやってる事は間違ってる。そんなことで世界を支配なんて出来っこない。俺たちは負けたけど、必ずまた誰かが、世界を救う方法を見つけてここにやってくるだろう」
どんなに格好悪くたっていい。負け台詞に聞こえたっていい。
秀夜は伝えたかったのだ。
「そうか」
対して、ザントは短く答えただけだった。
「そんな奴がいたとしても、叩き潰せばいい話だ。危険な芽は早めに摘むだけだ。さて、俺はさっき言った、お前たちを殺す必要は無くなったと。どこへでも行くがいい」
それだけ言って、ザントは背を向けた。ジバコイルから珠を受け取り、黄道台へ向かう。
(おや…?)
その時、ふと秀夜は疑問に思った。
ザントは明らかに珠を黄道台にはめ込もうとしている。秀夜の頭の中に、図書館で見た本の一節が蘇る。
″ある時、ポケモンたちが暴走を始めた。ポケモンの暴走は人間にも莫大な被害を及ぼし、人間は滅びそうになった。その時、突如星座を司る十二のポケモンが現れ、暴走を沈めた。その力を逆に恐れた人々は、そのポケモンを世界の十二箇所へ封印したという。~
そう。十二星座ポケモンは、世界を救うほどの強大な力を持っていた。
その力に賭け、秀夜たちはここまで頑張ってきた。
ザントには一歩手前で負けた。
だが、
十二星座ポケモンは『世界を救うため』の手段だったはずだ。
願いをかなえる手段では、無かったはずだった。
「おい、ザント…ッ!」
秀夜が呼びかけたが遅かった。
ザントは、既に十二個の珠を設置してしまっていた。
「さあ、十二星座ポケモンたちよ、この世界を変えろ! 俺様の望む、新たな世界へと!」
その言葉とともに、黄道台から七色の光が放たれる。
世界中へと、悪の光ではなく、浄化の光が。
蠍座の毒によって、世界の混乱の元凶が弱り、徐々に消えてゆく。
辛うじて残った元凶も、獅子座の咆哮、射手座の聖なる弓の前に打ち消されていく。
水瓶座は、干上がった海や荒れた川、湖を生き返らせる。
蟹座と魚座が、その海や川に生き物を呼び戻す。
牡牛座、牡羊座、山羊座は大地を駆ける。
その大地の鳴動により、大地の生き物が次々と現れてきた。
乙女座、双子座、天秤座は最後の仕上げをする。
彼ら、彼女らの呪文によって、世界は完全に息を吹き返した。
城の中にいる、ザントや秀夜たちにも、その世界の現状は分かった。
唖然とした顔で立ち尽くすザント。
「な…何故だ…? 俺様の作戦は完璧だった…完璧だったはずだ…」
B・S団の天才、ザント。
天才が犯した、たった一つの間違いだった。
「俺の…世界が……消えてしまった…」
その時、大悟、梓、白那が部屋に飛び込んできた。
「柊君、やったな!」
「流石だ。流石秀夜…!」
「おめでとう、柊君! 貴方はその手で世界を救ったのよ!」
しかし、秀夜はそちらには顔を向けず、ザントに呼びかける。
「さあ、ザント。考えるんだ! この状況でもまだ、自分は間違ってないと言えるのかよ?」
秀夜は真剣に呼びかける。
「そうだ、ザント!」「目を覚ませよ!」「秀夜さんの言うとおりです!」
秀夜の後ろから飛ぶ声。ザントはゆっくりとこちらを向いた。
「お…俺は…間違って…いたのか…?」
虚ろな声だが、心はこもっていた。どう聞いても、悪人が放つ声ではなかった。
秀夜たちは無言で頷く。
「俺は…やり直せるのか?」
続いて、ザントはまたゆっくりと訊いた。
「ああ、もちろんだ! 斬人!」
秀夜は、B・S団ボスを『斬人』と呼んだ。それは、秀夜が斬人を認めたと言う事、少なくともザントにはそう聞こえた。
しかし、事態はまだ解決していなかった。
「ハンッ、何が起こったかと思って来てみれば。しかもB・S団ボスがわざわざ世界を救うなんて、どういう根性してるワケ?」
「キセノン様、B・Sミサイルが完成いたしましたぞ! これさえあればまた世界を闇に戻す事が出来まする!」
邪悪な笑みを浮かべた、キセノンとメカニックが立っていた。
続く