二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 天駆ける十二星座ポケモン 完結近し! ( No.376 )
- 日時: 2011/07/02 22:29
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: cebg9jtM)
あらすじ
ザントが犯したたった一つの間違いによって、世界は元の姿を取り戻す。
しかし、事態はまだ解決ではなかった。
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キセノンの言葉に、九人全員が絶句した。
「どういうことだよそれ…」
思わず声が出てしまう秀夜。
「はあ? 簡単よ、B・Sミサイルがまた完成したから放っちゃおうぜいえーいってことよ」
B・Sミサイルは、世界を崩壊させた原因だった。たった一発でも世界を揺るがす力を持っている。
「お前…本気で言ってるのか」
低い声で、ザントが言った。
「当たり前でしょ? ミサイルってのは放ってナンボなんですよ、ボス」
キセノンの口調は明快だ。表情が見えないのが怖い。
もちろん、秀夜は黙っていなかった。
「ふざけんじゃねえ! やらせるかよ、出て来いジャローダ!」
秀夜はジャローダを出し、攻撃の指示を出す。
「ロイヤルバーン!」
ジャローダは大きく叫んで、爆発を起こす。しかし、
「おいでなさいエルフーン! コットンガード!」
キセノンが出した色違いのエルフーンが、綿の盾を作り上げ、衝撃波を防いだ。
「ミサイル発射まで…あと十分くらいでーす☆ じゃ、そういうわけで、サヨナラー!」
それだけ言って、キセノンとメカニックは猛スピードで去っていく。
「…まずいぞ」
九人とも言葉が出なかった中、ザントが口を開く。
「世界は元の姿を取り戻したとはいえ、核のダメージはまだ直っていないだろう。そこにあのミサイルを放てば、今度は地球の核が持たんぞ!」
九人を更なる恐怖が襲う。世界の混乱どころの話ではないのだ。比喩的でなく、直接的な、世界の破滅。
その時、ザントが目を見開く。何かを決心したように。そして、
「お前たち、今すぐ城から脱出しろ。奴らは、俺が食い止める!」
思わず耳を疑った。一人で止められるはずがない。仮に止めたとして、ザントは重傷を負うだろう。
「待てよ」
だからこそ、秀夜は言った。
「俺も行く。お前一人を放っておく訳には行かない!」
しかし、ザントは首を横に振った。
「俺一人で大丈夫だ。仮にもあいつらは俺の部下。部下のしたことは、ボスである俺が責任を取る」
秀夜は何も言えなかった。これがザントの覚悟なのだ。
ザントは、ヘルガーとサザンドラを出し、闇へと駆けていく。
城の壁をぶち破って、四体のポケモンが現れる。
ウォーグル、ガブリアス、エアームド、フライゴンの四体は、それぞれ人を乗せている。
秀夜たちが着地すると、そこには既にB・S団が集まっていた。
「柊 秀夜! ボスはどうした! 何が起こっている?」
秀夜を呼んだのはヤルタだった。
その時に秀夜は気付いた。B・S団の面子は全て、ザントの置かれた状況を知らないのだ。
「実は…」
秀夜が訳を話そうとすると、B・S団の者たちがぞろぞろ集まってくる。
その中には見たことのない者たちもいた。おそらくA〜Kの者たちだろう。
秀夜がザントの状況を話すと、全員の顔が絶望に染まったのが分かった。
「…くそっ、やはりキセノンは裏切ったのか…ッ!」
悔しさを隠しきれないヤルタ。
他には怒りに震える者、悲しむ者、悔しがる者さまざまだったが、特に悲しんでいたのはトロピカルだった。
「ザント様! ザント様ああああああッ!」
泣きながら叫んで、トロピカルは城に駆け出そうとする。
しかし、その腕をヤルタが掴む。黙って、首を横に振った。
「私は、ボスを、ボスを放っておけません! 私は行く! たとえそれによって、この命が尽きるだとしても!」
トロピカルは、ヤルタの腕を振り切って走り出そうとする。
しかし、トロピカルの思いは叶わなかった。
刹那、城がカッと光り、直後、大爆発した。
バガアアアアアアアン! と猛烈な轟音が響き渡る。
「「ザント様あああ!」」
B・S団の者たちが絶叫する。トロピカルはその場に泣き崩れた。
そして、猛烈な爆風が秀夜たちを襲う。
「うおッ……!」
爆風に耐える秀夜たち。
爆風が消えると、そこにあったのは、瓦礫と化したB・S団の城だった。
大悟が腕時計に目をやる。
「十一分、経過…」
大悟がちらと呟いた。世界の危機は免れたが、しかし、ここにいる者は全て、この出来事を手放しで喜ぶことが出来なかった。
ザントの死が、秀夜たちの心に重くのしかかってくる。
しかし、神は秀夜たちを、そしてB・S団たちを見捨てなかった。
「おい、あれ見ろ!」
B・S団の下っ端だろうか、誰かが上を指差す。
そこには、三つ首の青い体に黒い毛の龍が、空を飛んでいた。
「ザント様だ!」「生きていたんだ、ザント様!」
B・S団の者たちが歓声を上げる。
秀夜たちも嬉しさのあまりハイタッチした。
そんな時、ヤルタがこちらを振り向いた。
「柊 秀夜。我々はボスを追う。お前たちと会うことはもうないだろう」
「ああ、そうだな」
秀夜がそう返すと、ヤルタは手を出した。
少し迷った秀夜だが、すぐにヤルタの意図を理解し、手を握る。
B・S団は、もう大丈夫だ。秀夜は、素直にそう感じることが出来た。
「では、さらばだ! さあ行くぞ、誇り高きB・S団の者たちよ!」
ヤルタはそう言って、B・S団のメンバーを引きつれ、去っていく。
秀夜は後ろを振り向いた。
不知火 京、白木 綾、沖田 平治、月下 由衣。雪月花 梓、津和吹 大悟、神凪 白那。
秀夜とともに戦ってくれた仲間たちが、誰よりも頼れる仲間たちがそこにいた。
秀夜は大きく息を吸って、叫ぶ。
「さあ、故郷に帰るぞ!」
最終章 終了