二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.101 )
- 日時: 2011/03/07 16:27
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: uXqk6hqo)
- 参照: 参照800突破、ありがとうございます!
第四十一話【いざ、京都へ】
夕陽が、まるで一つの芸術かのように京都の街を照らし出す。観光客の客足も絶えず、日本の美しい"和"の風景を眺めている人は少なくなかった。淡い茜色に染まった雲と空。そんななか、その美しい風景に似合わぬ光が空から降ってきた。いや——堕ちて来た。凄まじい爆発音とともにその光は街を傷つける。綺麗に掃除されたばかりの石畳に、ぽっかりと大きな穴が空いていた。吹き飛ばされた人々も、瞳に驚愕の色を浮かべている。そんな京都の林には、無数の黒い影が忍び寄っていた。
「愚かな人間共に思い知らせてやる……——本当の戦いは、"ここから"だと」
自信たっぷりの笑みを小さく漏らし、歯を見せてニヤッと笑った。険しい戦いの始まりを告げるホイッスルが鳴り響くまで——時間は、あと残りわずかだ。
**
漫遊寺中サッカー部。どんな学校なのかは知らないけれど、日本の心を重んじる学校なのかな、と勝手に想像を膨らませていた。そしたら、その通りらしい。
学校のモットーは「心と身体を鍛えること」。それ故、対抗試合などは行わないが、鍛え抜かれた体、研ぎ澄まされた心を兼ね備える漫遊寺中は、FFに出場していれば優勝候補になるだろうと噂されるほどの実力があるらしい。さっきから、らしいばっかり使っているけれど、本当にどんな学校なのかわからないから、そうとしか言えなくて。
「イプシロンは、無差別に学校を破壊してきたジェミニストームとは違い、隠れた強豪校に標準を定めてきた。彼等を倒せば……エイリア学園の狙いがわかるかもしれないわ」
急いで京都に向かうわよ。そう言い残すと、皆はそれぞれキャラバンに戻り始めた。私も、残っていた缶ジュースを一気に飲み干すと、ゴミ箱に放り、秋さんたちを追いかける。が、私を呼ぶ声が聞こえ、引っ張られたかのように立ち止まった。え? と振向くと、穏やかな表情の士郎がいて。
「どうしたの?」
一歩、また一歩と無言で近づいてくる士郎を見て、若干恐怖を覚える。何か一言くらい言ってくれないと、すごい怖いんだけど。どうしちゃったのかな?
男の子にしては白すぎる肌が近い。すぅと伸ばされた腕が、私の髪を撫で、そしてスカーフに触れた。あれ、士郎ってこんなに大きかったっけ?
「……スカーフ、つけたんだ。似合ってるよ」
「え?あ、そうかな?」
うん、と頷く士郎を見て、また照れが再発する。秋さんたちに言われたときより、なんかどきどきしたりして。でもそれはきっと、士郎とは小さい頃から一緒にいたから、なんだよね。
「Merci、士郎」
私もにっこり笑い返して、キャラバンへ戻った。
そう言えば、京都ってどういう街なんだろう? 私、日本人のくせに国内旅行なんてほとんど行ったことないから、高速道路の青い看板見るだけで興奮しちゃって。夏未さんに教えてもらってたな。この先、旅を続けていくのなら……いくつの街に行けるのだろう。どれだけの出会いがあるのだろう。そう考えると、これから長く続くであろう旅を考えても、あまり億劫にならなかった。というよりは、少しでもポジティブでいたくって。
無理やり楽しい気分を引き出すと、その分ぽっかりと心が虚しくなる。それでも、ずっと暗い気持ちを引きずるよりはマシだった。
イナズマキャラバンは、京の都を目指し走り続ける。