二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.113 )
- 日時: 2011/03/16 13:55
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
- 参照: 発熱かも……
第四十四話【少女のサッカースタイル】
繋がったパスを受け取り、ゴール前に立ちはだかるDF達を抜き去った。予測できないようにボールを操り、相手の裏を突く。スタミナに自信が無い私が、皆さんに少しでも近づけるように選んだ手段……それは、技術の向上だった。パワーが足りない分、全身を使ってシュートを放つ。きっとこれが、私の個性。
「……"ヴィオロントン"!」
ゆらゆらと揺れながら、私でも予測不可能な動きでボールは、ゴールに吸い込まれていった。
*。+
「すげぇ……キャッチできると思ったのに、直前で曲がった……」
「あそこまでコースを変えられるとは……」
なんとか成功したシュート。打つのは久しぶりだったから、決められるかどうか不安だったけれど。
「相変わらず、器用だよね〜桃ちゃんは」
驚きと納得が入り混じった表情で、士郎はぽつりと呟く。褒めて貰えたのが嬉しくて、自然と笑み崩れてしまった。Merci、とお礼を言う。ふと後ろへ振り返ると、鬼道さんがこちらを見ていた。顎に手を置き、何か物思いに耽っている。
「……春崎は、俺たちが持っていないものを持っている。華麗なテクニックとダイレクトパスで奏でるプレースタイルはまさに——"シャンパンフットボール"そのものだ」
ゴーグルをつけているからか、私の位置からは、鬼道さんの表情はあまりよく見えなかった。でも、会話の内容からして私を評価してくれたのだろう。士郎は円堂さんと一緒になって、うんうんと頷いている。
シャンパンフットボール、か。いつかのプロサッカー大会で、そんなような称号を与えられたチームがあったような……あ。フランス代表チームだったっけ。お父様は、そちら関係の仕事に就いていたから似るのも仕方が無いか。それに私は、あのプレースタイル、気に入っているし。お褒め頂、光栄です……なんてね。
「でも鬼道さんだって凄いですよ。あんな短時間で相手チームの分析を完了できるなんて……さすが天才ゲームメイカーです」
「そーいや桃花って、なんで俺たちのこと、"さん付け"なんだ?」
何かを言いかけた鬼道さんの言葉を遮り、円堂さんはずいっと前へ出てきた。あまりに近いので、思わず一歩、退いてしまった。悪い事しちゃったかな、と反省の言葉が脳裏を過ぎる。けれど円堂さんは、まったく気にしていないようだ。
「俺たち、桃花のこと桃花って呼ぶから。桃花も呼び捨てでいいぞ! な? 鬼道」
「え……あぁ。俺は構わない」
一瞬、いきなり話題を振られて動揺したような表情を垣間見せた鬼道さん。が、すぐにポーカーフェイスに戻る。その冷静さには、少し憧れてしまうな。
でも何だかんだ言って、これが私の、
「じゃあ……よろしくお願いします! 円堂くん、鬼道くん」
……"君付け"デビュー、なのかな?
「あ、敬語禁止な」
「……え」