二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.12 )
- 日時: 2011/02/11 14:08
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第八話【おかえり】
信じられないけど、僕に向かって"ただいま"と呟いたのは、桃花……なんだよね?幼い頃、まだアツヤも元気だった頃、遠い遠い場所へ行くって言って、"さよなら"を余儀なくされた女の子。
「…ゴメンね、怒ってるでしょ?」
申し訳なさそうな苦笑い。怒ってる?僕が?……そうか。あの時、桃花はきちんと説明してくれなかったんだっけ。いや、説明できなかったんだね。桃花の事だからきっと辛かったんだ。
「…桃花」
話しかける言葉をあれだけ考えていたのに、いざ本人を目の前にすると、声も足も震える。何を言えばいいのかわからなくて。結局、きみの名前を呼ぶことしか、出来ない。
「ゴメンね、士郎」
何で桃花に謝らせてるの?悪いのは、桃花じゃない。あんなに小さかった僕らに解決できる事じゃなかっただろう?
「謝らないで」
少し落ち着いてきた鼓動。僕だって男だ、僕が弱気になってどうする。
「桃花は、悪くないから」
神様の悪戯に、逆らえる人間なんていないんだから…——
「あの時はまだ小さかったから、自分でもよくわからなくって…でも"さよなら"しなきゃいけないのは、解って…」
溜まっていた言葉が、桃花の唇から次々と溢れだす。一生懸命、僕に気を遣ってくれているのが可愛らしくて、クスッと笑ってしまう。
そして——ふんわりと抱きしめた。
「んん…士郎…っ!?」
腕のなかで暴れる桃花を、いっそう強く抱きしめる。ゴメンね、と桃花に囁いた。それでも…こうでもしないと僕が落ち着けないから。家族が帰ってきたみたいな気持ち。すっごく嬉しくて、抑えきれないんだ。
でも…嫌われちゃうかな?だけど桃花、小さい頃に、
『お母様が言ってたんだけどね、ギュウッと抱きしめるのは、"大切なひと"なんだって』
ハグの意味を聞いたらしいけど、アツヤも僕も、へぇ…と納得しながら聞いていたっけ。"大切なひと"。桃花は、僕にとって大切なひとだよ?だから…今まで離れていた分、少し我が儘を言わせて下さい。
「桃花、」
大切なひとを迎えてあげなくちゃ。
「——おかえり」
( この言葉が言える日が来るなんて )