二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.123 )
- 日時: 2011/03/17 13:53
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2lvkklET)
第四十五話【ヴァイオリン奏者】
長かった練習も終わり、あっという間に空は闇色に染まっていた。皆さんが寝静まったことを確認すると、こっそりテントから抜け出す。途中、秋さんにばれそうになったけれど、色々と疲れているようでぐっすりと眠っていた。塔子さんの布団を掛けなおすと、楽器ケースを持って外へ抜け出す。暗闇のせいか、私は気付けなかった。春奈ちゃんの布団の山が、やけに小さかったことに。
*。+
「ここなら、聞こえないよね」
だいぶ遠くまで歩いた気がする。けれど、思った以上に月灯りが眩しくて、ここまでの道のりを照らしてくれたから、怖くはなかった。地面の上にそっとケースを置く。そして訳もなく静かに楽器を取り出すと、私の大好きな曲を演奏し始めた。
マルティーニの代表作「愛の喜び」は、結婚式などでもよく使用されるフランス語の歌曲で、いろいろな楽器にアレンジされても親しまれている名曲です。詩の内容は、決してハッピーエンドの恋を描いているわけではなく、どちらかと言えば不実な恋人の物語なのですが……タイトルからして、甘く優しいイメージですから、私は気に入っています。美しい旋律も演奏のしがいがありますし。それにこの曲は……お母様との思い出が詰まった、大切な曲ですから。
曲もラストに差し掛かった時、突然、校舎のほうから怒鳴り声が聞こえ、思わず演奏を止めてしまった。女の子と男の子の声かな? 喧嘩しているようにも受け取れる。どこか聞き覚えのある声で、私は様子を見てみることにした。
*。+
「それなら、自分の実力で戦ってみせなさいよ!」
「うるさいなっ! 俺の気持ちも知らないで、わかりきってるように言うなよ!」
こっそりと中を覗いてみる。ぬ、盗み聞きじゃないよ? 様子を見て、タイミングを見計らって話を聞いてあげる予定なんだから。でもどうやら、そろそろ行かないとまずそう……喧嘩は、留まることを知らない。春奈さんと木暮くん、お互いに意地を張り合っちゃってるみたいだし……ここは先輩として、仲を取り持ってあげなきゃ! 頑張るのよ、春崎桃花!
「そんなの、甘ったれてるだけで……もっ桃花さん!?」
勢いで割り込んじゃったけど、これからどうするの……? とりあえず、喧嘩の理由を聞いてみないとだよね。小さい頃から、喧嘩を収めるのには慣れてるんだから。しかも、もっと大変な喧嘩を、ね。
「二人とも、こんな時間にどうしたの? 揉め事があったみたいだし……」
「だってコイツが!」
「こ、木暮くんがですねっ!」
威勢が良いのは最初だけ。本当は、自分も悪いことをわかってるから、なんだよね。私は、二人がぽつりぽつり話してくれることに、じっと耳を傾けることにした。