二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

*【記念短編!】* ( No.157 )
日時: 2011/04/18 11:26
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: yCBA8YKv)
参照: 四月六日は士郎の日!



 ——昔々、まだ妖精が森に住み、魔女と人間が共生していた時代。とある小さな国に、お姫様が誕生しました。


 長らく子供に恵まれなかった王と王妃にとって、娘の誕生は、とても喜ばしいものでした。そこで王様は、城でパーティーを開くことにしたのです。そのパーティーには、姫の誕生を祝うたくさんの人々や、姫に送られたプレゼントが、たくさんたくさん集まりました。人間達だけでなく、王から招待を受けた魔女達も、お城へとやってきたのです。

 お披露目された姫に、魔女達はそれぞれ贈り物をしました。人としての暖かさ、本当の優しさ、恵まれた幸運。顔を綻ばせる王達の前で、順に魔法をかけていきました。

 そんな中、パーティーに招かれざる客が現れました。森の奥でひっそりと暮らす魔女が、パーティーに呼ばれなかったことを恨み、姫に悪い魔法をかけたのです。王様は長らく、その魔女に会っていなかったので、彼女の事をすっかり忘れていたのでした。魔女は、すやすやと眠る姫に悪い魔法をかけると不気味な笑い声を辺りに響かせ、姿を消してしまいました。


「娘が十四歳を迎える日、娘は糸車の針に指を刺し、短い生涯に幕を下ろすだろう!」


 残された王妃は泣き出し、王もがっくりと膝を床につけ、自分の失態を悔やんでいました。

 悲しみにくれる城内。一人の魔女が呟きました。

「私はまだ、贈り物をしていません。では、私は姫への贈り物として……———」

 彼女は、森の魔女よりは弱い魔女でしたが、姫にかけられた理不尽な運命への対抗策として、とある魔法をかけました。その魔法とは……——


*。+*。+

 金や銀の装飾がいたるところに見られる城内。豪華な柱が壁に沿って並び、歴代の王の肖像画が飾られていた。天空の世界を描いた高い天井には、国中から寄せ集めたガラス細工の名士に作らせたシャンデリアが、真紅の絨毯を煌びやかに照らしている。そんな城の中、この国の頂点に立つ人物の部屋へ向かう廊下を、一人の若者が歩いていた。
 長く伸ばした茶色い髪を、故意に縮め束ねた若者。真新しい革靴が絨毯を踏む度、蒼色のマントが靡いている。絨毯に負けないほど紅く、そしてどこまでも澄んでいる瞳は、王がいるはずの部屋を見つめていた。どこか緊張している面持ちだが、足取りは軽い。ドアの前で立ち止まると、コホンと空咳をし、重いドアを押した。

「ただいま戻りました」

 よく通る声で言い、そのまま歩みを進めると段の前に跪いた。マントの裾が床についていることにも気付かず、若者は真紅の瞳を伏せると、恭しくお辞儀してみせる。そして頭をあげると、ぎこちない笑みを浮かべた。

「早かったな、鬼道! 国民からの反発は、大丈夫だったのか?」

 太陽を連想させるような、そんな明るい表情で彼———国の主、円堂守は笑っていた。鬼道と呼ばれた少年を再度見つめ、「敬語はやめろって言っただろ〜?」と子供のように話しかける。鬼道は困ったように、それでも楽しそうに微笑むと、ゆっくりと立ち上がった。

「いえ、姫様の為と説得したせいか、表立った抵抗は見られませんでした。これも、王が国民から慕われている証でしょう」

 鬼道の言葉を聞いた円堂は、ほっと安堵の溜め息を吐いていた。どうやら、相当心配していたらしい。周りの召使たちも、それぞれ思ったことを口にしている。なんとも自由な人々だ。
 それはともかく。今回の令を国民が理解してくれたことに、円堂は心を暖めた。それほどまで姫を愛してくれているのか。幸せな王室だ、円堂は心の内で呟く。が、口元が緩み目元がにやけている様子では、心の呟きなど簡単にばれてしまう。鬼道は円堂の考えが読めたのか、呆れ気味に腕を組んでいた。

「さてと……じゃあ俺は、プレゼントの準備でもしてこようかな」
「え、まだしてなかったんですか」
「いや〜まだまだ先だと思ってたら、もうこんな時期になっちゃって……」

 ドタバタと部屋を飛び出していく王。召使たちも大慌てで後を追いかけていった。そんな様子を見て、含み笑いを漏らす鬼道。しばし部屋を眺め、それにしても、と疑問を抱く。

「呪いなど信じないと言っていたのに……今頃になって、"糸車収集令"を出すなんてな」

 今頃、城の裏手では、何の罪も無い糸車が炎に焼かれているのだろう。灰は、庭園の草花達の栄養剤にでも使われるのだろうか。しばらくぼんやりと物思いにふけっていた鬼道だが、忙しそうに走り回る召使の姿を見て、弾かれたように我に返った。
 もうすぐ、姫の誕生日会が盛大に開かれる。
 そちらに人事を注ぎすぎたせいで、軍指揮官の自分が休日とも関わらず、城下へと借り出されたのだ。早く自室に戻り、読みかけの本でも読もう。久しぶりの休日とあって、最近休めていなかった鬼道は、かなり遠くに位置する自室目指して、一歩足を踏み出したのだった。


 〜作者より〜
始まってしまいました記念短編!何だか長引きそうで怖いですw
結構、捏造ポイントも多いのですが……糸車でわかりましたか?元ネタの童話。
皆さん、知ってると思います。絵本などでたくさんあるのでw

まだヒロイン出てませんが、ゆっくり待って下さると嬉しいです^^*