二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.20 )
日時: 2010/12/01 20:34
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: QiznQFqE)


  第十話【ブリザードの吹雪】

 サッカー部に入部する事を決めた私は、部の雰囲気に慣れる為にも練習を見学する事にした。
 ……ちょっぴり、士郎がサッカーする所を見てみたいしね。

「じゃあ、練習始めるよ!!」
「「おぉぉぉぉ!!!」」

 士郎の声と共に部活が始まった。そっか、士郎はキャプテンなんだね。人をまとめる立場なんだから、皆にも慕われているみたい。私が心配する事じゃないけど、ちょっと気になってたの…
 私が知ってる"吹雪 士郎"は、優しくて温厚な男の子だった。様子を見てるとそれは、今でも同じみたい。

「吹雪、パスだ!!」
「喜多海くん、行くよ!!」

 皆でサッカーをする士郎は、とっても楽しそうで…ほっ、と胸をなでおろした。
 でも…士郎のポジションに、どうも違和感を感じる。私の記憶が確かなら…ううん、絶対に士郎はDFだった。FWだったのは、士郎じゃなくて——

「吹雪くん、決めろっ!!」

 ゴール前に飛び出していった士郎。右手は、マフラーを撫でていた。荒い息を吐く口元は、

(——…出番だよ)

 そう呟いているように見える。目の錯覚かな。でも士郎は、確かにそう呟いた筈なんだけど。
 色々と想いを巡らせている間にも、士郎はどんどんゴールへ迫って行く。あっという間にゴール前へ躍り出てしまった。そのプレイスタイルには、どこか懐かしさを感じる。
 …懐かしさどころでは無い。そのプレイを私は、ずっと近くで見てきた。小さい頃からずっと同じ。幼馴染のサッカースタイルだから。好戦的な瞳も少々、乱暴な物言いも。

「エターナルブリザード!!」

 ——"吹雪 アツヤ"。そのものだ。

「オーロラガーデ…うわぁっっ!!」

 ゴールに突き刺さる強力なシュート。フィールドの外でも感じられる威圧感。これは、士郎じゃない…私の知ってる士郎じゃない。

「ナイスシュート!!吹雪!!」

 氷上くんに笑いかけた、士郎…吹雪の、その笑顔は、完璧に"吹雪 アツヤ"だった。

「…アツ、ヤ?」

 どうして、と訊こうとした。ベンチを抜けて。
 でも、ふと合った士郎の瞳は…満足そうな、嬉しそうな、何とも言えない瞳。もう訳がわからない。士郎は、自分のスタイルをアツヤそっくりに真似たの?人それぞれのスタイルを、ここまで忠実に再現できる筈がない。たとえ…仲の良い、そっくりな兄弟だったとしても。

「やっぱり、吹雪くんのシュートはすごいね!!」
「さっすが"ブリザードの吹雪"だ」

 何で、アツヤそっくりのサッカーをするのか。何故、出来るのか。疑問ばかりが脳裏を巡る。考えてわかる事じゃない、なんてとっくに解ってるけど。
 …私は、士郎にどうして欲しいんだろう?変化を受け入れられない。受け入れるより先に、疑問ばかり心に浮かんで。でも、それでも一つ、解るのは…
 
 ——士郎は、昔のままじゃないんだ。