二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

*本編サイドストーリー* ( No.204 )
日時: 2011/05/16 17:40
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 0fWfwKh9)
参照: 珠香ちゃんと紺子ちゃんに世話を焼かれる桃花が好きだv




「おはよう、紺子ちゃん」
「おはよ、桃花ちゃん」


 斜め前にある机の持ち主が姿を現した。起きたばかりなのか、柔らかい髪がくるっと跳ねていた。当の本人は気付いていないらしい。くしを取り出し桃花ちゃんを呼ぶと、自分の席に座らせ髪を梳かしてあげた。顔は、まだ眠そうで。朝にめっぽう弱いというのは、どうやら冗談では無いらしい。吹雪くんが"眠り姫"とからかうのにも納得がいく。
 何度も何度も梳かしていく間に、明るい茶色の髪はいつもの輝きを取り戻した。薄暗い教室でも、綺麗な天使の輪が浮き出ている。


「ありがと、紺子ちゃん……」


 まだ眠気が覚めないのか、もやもやとこもった声。机に突っ伏しているのも関係があるのだろうけど、やっぱり瞳もとろんとしていて。彼女の頭に手を置くと、二三度撫でてみた。甘い匂いがする。珠香ちゃんが言っていた、新発売のシャンプーなのかもしれない。


「まだ、寝てる? 先生、この時間じゃ来ないから」
「でもそしたら、紺子ちゃんに悪いし……」


 そう言いながらも、瞳はとろんと眠気を訴えていた。
 まだ大丈夫だよ。そう告げようとして、まだ暖かい左手を包み込んだ。でも、言葉は彼女によって遮られ。


「……その朧月夜の儚きこと、春夢の如く。記憶の約束、その堅さ故に、滅びてゆく影を見る」


 なんだか難しい言葉をつらつらと噛まずに吐き出して。こんな言葉、国語の教科書には載っていなかったから、ますます謎が深まる。何かの呪文なのかな?


「その言葉、なぁに?」
「……今の状況を昔の日本語っぽく話すと、こうなるのかなって」


 これは、桃花ちゃんの天然が発動したと思っていいのかな?
 何のことを言っているのか、何があったのか、変な夢でも見たのか、悩みでもあるのか。複数の選択肢が脳裏に浮かぶ。けれど、残念なことに本人は夢の世界へと誘われていた。聴けなくなっちゃった。


「まあ、いっか」


 桃花ちゃんとは、これからずっといられるんだから。
 まだチャンスはあるし、悩みがあるのなら打ち明けてもくれるだろう。それまでじっくり待てば良い。


 ——そう思っていた。


 知らなかったの。雷門中がやってきて、エイリア学園を倒すためにと吹雪くんと桃花ちゃんを連れていっちゃうなんて。夢にも思わなかったの。でも、仲間が世界を救う戦いに必要とされている。それは二人の努力が認められたことと一緒で、誇らしいことなのに。
 だけど、あの暖かみに包まれたいと。仲間と共に永久に笑い合いたいと。永遠など存在しないとわかっているのに。でも、でも、そう思うの。白恋中の皆も、もちろん私も、


「————早く、逢いたいよ」


 零れる涙を拭いながら、そう、切に願う。



              ——* ぐっばい、えんじぇる *——