二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 *本編サイドストーリー* ( No.216 )
日時: 2011/06/05 21:02
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: t8UeV32b)
参照: コメ返し遅くなりますっ;すいませんorz



「どう、したの?」


 怯える彼女に何も弁解できない僕は——酷く愚かでちっぽけだ。謝罪の言葉を伝えられない不便な喉からは、ただ楽しそうにカラカラと響く乾いた笑い声だけが、くぐもって辺りに響いた。


    —* The tears of the angel *—


「ももちゃん、」


 ひゅう、と小さな"空っぽ"の音がした。何をしても、何を得ても埋まらないその隙間に風が吹くとき、このえらく寂しい叫びは喉元で響くのだ。今までもそうだった。人肌恋しくなる秋の晩、何度この叫びで部屋がいっぱいになったことか。そんな回数など、もう覚えてなんかいない。
 でももう、そんなこと気にしなくて良いんだ。だって僕には——彼女がいるから。ちゃんと僕を見てくれる、暖かくて優しい人が、ずっとずっと隣に居ると約束してくれた。夢でも幻でも、嘘でもいいから言って欲しかった言葉を。『ずっと一緒だよ』って。もちろんお互い子供だし、絶対という根拠は無い。でもその言葉で、ようやく隙間は埋まり始めたんだ。少しずつ、ゆっくりと。
 ああ、でも。僕はなんて恐ろしい夢を見てしまったのだろう。——いや、哀しい過去を"夢"という形で思い出してしまったのだろう。こんなものさえ見なければ今頃、きっと僕と彼女は笑い合えていたはずなのに。でもやっぱり悪いのは、夢なんかに怯えて彼女を困らせている僕なのかもしれない。
 だけど、僕はやっぱり怖いんだ。ねえ、桃ちゃん、お願いだから。


「——僕を、見て?」


 嘘なんていう戯言で、


( わたし、アツヤがすき )


 僕を、独りにしないでください。


幼少期の夢を見て不安になる吹雪くん。桃花が小さい頃、アツヤに恋心を抱いていたら……という捏造要素たっぷりという条件で書いていますのであしからず。