二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【inzm11/アンケ実施中です!】 ( No.249 )
- 日時: 2011/08/03 22:34
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Va4IJVQE)
- 参照: gdgdです☆(キラッ
ここは、何処だろう?
空も海も草も土も何も無いこの空間に、僕は独りで立ち尽くしていた。何も、なーんにも無い。ただ、視界はどこかぼやけていて決してクリアとは言えなかった。音も無く、風も無く、僕以外の生命さえ感じられない。嗚呼、僕、本当に独りなんだ——ちょっと、心細いかな。
「だれかー、いませんかー!」
ほぼ無意識に叫んだけれど、答えは返ってこない。ただひたすら、僕の声が響き反響するのみだった。不思議と怖くは無かったけれど、また独りになってしまったのかな、と寂しくなった。世界はこれでもかってくらい、大切なモノに満ちている。そしてその大切なモノたちは、どうしようもないほど、儚かった。街で見かけ、衝動買いしてしまった愛らしい小鳥のガラス細工も、虹を映しこんだ水たまりも、悴む(かじかむ)指先に息を吹きかけながら作った雪だるまも——、大切なあの人も。一度ゆっくりと目を伏せ、次に瞳が世界を映す頃には、僕の手には何も残らなかった。
世界なんて、所詮そんなもの。
ちょっと苦しくなって、無理やり口角を吊り上げる。これは一種の癖らしく、よくやっては染岡くんに怒られた。無理するなって、大丈夫だって。僕からすれば、何が無理で、何が大丈夫なのかさえ知らなくて、そして知ろうと思わないほど、どうでも良いことだったけれど。
その時、ふと空気が動いた。ゆっくりと目を開ければ、視界の隅に映り込んだ薄いピンク色のドレスの裾。え、と目を凝らしその姿を眺める。茶色い髪は肩の上でひょこひょこと跳ね、頭の上では純白のスカーフが揺ら揺ら踊っていた。背丈は、僕と同じくらいかな?
彼女はどうしてここにいるんだろう? そんな疑問を抱いた瞬間、反射的に前へと進みだす脚。
よく小柄だと言われるけれど、体力にはそれなりに自信があった。それに追いかけているのは子兎のような女の子。すぐに追いつけると思っていたのに。
( どうして追いつけないんだ……? )
僕のほうが速いのに。彼女はまるで氷の上を滑っていくかのように先へ先へと行ってしまう。対照的に鉛のように重くなっていく脚に、驚いた。息が切れる。少し早すぎないかな、ちょっぴり情けなくなったけど我慢我慢っと。
「まっ……ねえ、待ってよ!」
掠れた声で叫べば刹那、少女の体がフリーズした。——よし、追いつける!
後ろに振られた彼女の腕を半ば無理やり掴む。同年代の女の子とあまり触れあったことがない僕は、その華奢さに驚いた。
嗚呼、この娘も脆く儚い存在なのか。
歪みかけた唇でどうにか笑みを描き、ゆっくりと問いかける。不思議なことに彼女は、息も切れていなければ肩も上下していなかった。でも、もっと驚いたのは——
「あの……、え?」
薄い桃色の瞳に浮かんだ、透明な雫。
何も言えぬ僕に何も言わぬ彼女は一度、腕を振りほどこうと暴れられた。が、そこは体格差でカバーする。ぽたりと伝った涙は、儚いと同時にとても美しかった。
ねえ、だけど、どうしてキミは、
「こんなところで、泣いてるの?」
躊躇いがちに開かれた唇がゆっくりと何かを形作り、それが言葉となって僕の耳へと響く前に……——
*綺麗な涙、ひとしずく。
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番外/吹雪くんの夢です。これだけで1000文字いくと思わなかった……そろそろ従者染岡さんが出せそうですw