二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.25 )
日時: 2010/12/03 21:40
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: ja6QJnOq)


  第十一話【小さな決断】

「今のプレイ、見ててくれた?」

 呆然とフィールドを見つめていた。そのせいで、士郎の言葉を受け取り損ねてしまったけれど。…どうしよう、何て言葉をかければいいんだろう?何を言えばいいのか解らなくって、一生懸命考えても何も思い浮かばなくて。自分を落ち着けようと思っても早まる鼓動は収まらない。

「う、うん…ナイスディフェンスだったよ」

 シュートの話になったら、きっと私は士郎に言葉をかけられなくなっちゃう。だって、まだこの状況が飲み込めていないんだから。…士郎が、アツヤと重なってしまう。これだけは、二人の為にも思ってはいけない事だから。だからはっきりさせておく必要があるの。

「シュートは?」
「…士郎は、DFだったよね」

 声色が震えているのが、辛うじてわかった。聞いてはいけない、そんなことを言ってしまった気がして。何があったのか、なぜ士郎がFWなのか、知りたいことは溢れるほどあるのに…真実を知ってしまったら刹那、自分が壊れてしまうんじゃないかって。

「僕、FWも出来るようになったんだよ!」

 きらきらの微笑。その笑顔が幼い日の士郎とかさなる。満足げで嬉しそうで、見ている私まで幸せな気持ちに浸れる、あの笑顔。

(『みたみた?ぼく、ちゃんとボールをとったんだよ!』)

 刹那、硬直状態だった身体から一気に力が抜けていく。足元も浮つく。視界がガタっと落ちていく。色々な思いが溢れすぎて、私…パニックになってたのかも。私は、環境の変化についていくのが苦手だから。
 このまま座り込んじゃう…そう思っていたら、身体が誰かによってしっかりと支えられた。左手の肘を、しっかりと掴まれている。

「桃花!?大丈夫?」
「だだだ大丈夫?保健室、行く?」
「紺子も付いていくよ!!」

 士郎に珠香ちゃん、紺子ちゃんだ。他のメンバーも心配そうにしている。本当、嫌になっちゃう…思考がきちんとまとめられないこの癖。コンピューターみたいに、内容保存量をオーバーしちゃうと途端に崩れちゃうんだから。

「ゴメンなさい…ちょっと疲れちゃったのかも」

 引越しやら何やらで忙しかったから、と簡単に理由を言う。心配させちゃうのも悪いしね、こう言っておけば皆もわかってくれるよ。

「本当に大丈夫か?」
「無理は、しないほうがいいから」

 喜多海くんや氷上くんも、優しく声をかけてくれた。もう…私は何をやってるのよ…

「うん、大丈夫だよ!」

 落ち着いてきた私は、こっそり心のなかである決断をしていた。

 (士郎に詳しく話を聞かないと…っ)

 パニックになろうとも私には、知る権利と義務がある。辛いときに隣にいてあげられなかった。その気持ちもあるからだろうけど…私に、迷いは無かった。