二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.32 )
- 日時: 2010/12/24 12:23
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第十六話【初対面さん】
あの日から、二週間が経った。北海道では雪が積り、本格的な寒さが体を襲う。こんなに寒かったかな、なんて。小さい頃は、普通に外で遊んでいたのに。
この二週間、私は平穏な日々を送っていた。素敵な仲間達に囲まれ、慣れない学校生活を楽しく生活出来ていた。気掛かりな事と言えば、お姉さんからのメールぐらいで。学校に転校してから今日までの間に、十四回程、メールが届いた。携帯を弄る時間も無いくらい忙しいって言ってたのに。一日一回は、送ってきてるんだよね。しばらくは、このメールが悩みの種となりそうです。
正式にサッカー部に入部した私は、マネージャーとして頼りないながらも活動していた。弱小と罵られても、皆と過ごす時間は掛け替えの無い宝物で。他では、絶対に手に入れる事が出来ないものだ。
「もーもーかーちゃん!!ヴァイオリン、弾いて!!」
「……え?」
部活が始まる少し前。部長さんは、何処かへお出かけしているらしく、姿が見当たらない。皆で楽しくお話している最中にひょんな事を言い出したのは、他でも無い珠香ちゃんだ。
「約束したでしょ?折角、皆がいるんだし…いいじゃん!!」
私、珠香ちゃんとそんな約束したっけ…?記憶が無い。いや、してない筈なんだけど。でも、珠香ちゃんのキラキラの笑顔を見ちゃうと、そんな申し訳ない質問なんて出来なくて。
緊張しながらも、ケースから楽器を取り出す。
「…恥ずかしいから、少しだけだよ?」
あのまま抵抗し続けたなら、私は押し負けしていただろうし。私はどうしても珠香ちゃんには、勝てない。これは、二週間という時間で知った珠香ちゃんの一面です。
敗北感を味わうくらいなら、大人しく私の演奏を聞いて貰おう。これが私の心情です。
**
静まり返った部室。聞こえるのは、ヴァイオリンの音色のみ。お母様に憧れて始めたヴァイオリン演奏。お祖母様のピアノのアンサンブルに合わせて聞こえてくる鮮麗されたヴァイオリンの音が大好きで。お母様みたいに、人を感動させられる演奏がしたくて、練習を始めたんだ。元々、お祖母様がピアノもヴァイオリンも出来る方で、それで打ち込み始めたんだっけ。あぁ、懐かしいな。私の演奏で、誰かを元気付けられたら良いのに…——
「ぶ、ぶらぼーっ!!」
パチパチと拍手が鳴り響く。どう考えても、部員の数より大きい音だった。でも、今の私にそんな事を考える余裕は、一切無い。失敗も最小限に抑えられたし、悴む指ではこれが限界だな。
「いやぁ、ヴァイオリンなんて初めて聴いたよ〜」
「あら、私はパーティでよく聴きますけど…素晴らしい演奏だったわ」
初めて聞いた声。どう考えても初めましての方々の会話。何故、このタイミングで初対面さんがいるんでしょう?しかも…
「桃花ちゃんのお陰で、雷門中の皆さんを素敵にお出迎え出来たよ!!ありがとうっ」
…こんなにたくさん。