二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.36 )
- 日時: 2011/01/16 07:47
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第二十話【桃ちゃん】
すぐに試合開始かと思ったけれど、そうでは無かったみたい。瞳子さんが士郎に話したい事があるらしくて、場所を探していた。その間、皆は、雷門中の人たちと雪遊びをするみたい。私も混ざろうかと珠香ちゃんを探していた。が、瞳子さんに引き止められる。
「桃花さん、貴女にも聞いておいて貰いたいの。いいかしら?」
場所は校庭の"かまくら"に決定。火鉢とお餅を持っていって、食べて貰う事にした。かまくらの中は暖かい。自然と緊張の糸が緩まる。そしていよいよ、話が始まった。
「私達は…"エイリア学園"を倒す為に、仲間を集めてるの」
「仲間を?」
瞳子さんは頷いた。エイリア学園が何なのかは解らないけど、サッカー部に仲間集めをしているんだから、サッカーが強い学校なのかも。結構、個性的な学校名だな。…と思っていられたのは今のうち。見せて貰った画像には、壊れた学校の数々が映っていた。雪が積っているのを考えると、北海道の学校らしい。
「数日前からエイリア学園は、北海道の小中学校も破壊し始めているわ」
悪い事をしているんだ。学校を壊すなんて…酷すぎる。ボロボロに崩れた校舎は、写真を通してでも痛々しさが伝わってきた。もしかして…次の標的が、白恋中なの?
お餅をひっくり返しながら、うちは狙われないから大丈夫さ、と言ってのける士郎。確かに弱小チームだけど、白恋中だけの問題じゃ無いわよね。被害が増えたら大変だもん。
「俺たちは、ヤツ等を倒す為に"地上最強のサッカーチーム"を作ってるんだ!!だから吹雪、お前に会いに来たんだぜ」
それが目的だったんだ…でも、どうしてこの話を私が聞いていなければいけないんだろう。それがとても気になる。
ボーっと考えている間にも、どんどん話は進んでいた。
「吹雪くん…貴方の実力、見せてくれる?」
円堂さんにお餅を差し出しながら、いいですよ、と笑った士郎。時間も余裕があるとは、言えない。音無さんも円堂さんも、かまくらの外へ出始めていた。士郎に続いて、私も足を進める。けど、やはり立ち止まった。瞳子さんに聞きたい。何故、私が聞いておく必要があったのか。
「瞳子さん、私は…今の話の場に必要だったんですか?」
驚いたように目を見開かれた。けれど、焦っているようには思えない。聞かれた時に答えられる心の準備は、済んでいたようで。
「いずれ、吹雪くんが白恋中サッカー部を抜けた時に説明して欲しかったの。それと、もしかしたら…」
一度、何かを言いかけた唇は、すぐにキュッと結ばれてしまった。隠し事をされているようで、快くは思えない。でも、続く言葉が何なのかを聞ける勇気は、私には無いの。
「…いずれ解る事よ」
目を逸らされたから、あまり信用は出来なかった。士郎が雷門イレブンに加わる事になったら、本当にこの人に任せて大丈夫なのかしら?そんな疑問が頭を過ぎる。その考えを振り切って、かまくらを出た。人を信じないなんて失礼な事、しちゃいけないもんね。まずは、信じないと始まらないよ。
「試合の準備があるので、先に失礼します」
「…桃ちゃん、」
かまくらを出た時、瞳子さんの切なげな声が聞こえた。小さかったから、あまり聞き取れなかったけど…今、何て言った?"桃ちゃん"?その呼び名は、確か、もっと小さかった頃に呼ばれていたけれど…
振り向いた時にはもう、瞳子さんは凛とした表情に戻っていて…聞きなおすタイミングを失ってしまっていた。