二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.37 )
日時: 2010/12/30 21:45
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)

  第二十一話【代わりの選手は】


「相手は、日本一のチームだ!どこまで出来るか解らないけど、頑張ろう!」

 士郎の言葉に続いて、おぉぉぉ!!と威勢の良い声が校庭に響く。とうとう試合が始まってしまうんだ。結果が気になる。士郎は何処へ行くのか…気になって仕方が無い。

「…素直に応援、できないなぁ」

 一人ベンチで呟いた。私は、皆のプレイを見て思った事を書いておくのが仕事。隣の雷門中のようなビデオは、借りられないからシャーペンでこつこつと書いていくしかない。これは、選手達の今後のプレイに関わってくるから手は抜けない。集中しないと。
 実況さんが話している最中、コートでは何やらもめているようだった。様子を見ていると、士郎のポジションについて、みたい。伝説のストライカー…つまり、彼のポジションはFWの筈なのに、なぜDFをやっているんだ、みたいな話が聞こえた。

「吹雪は、FWじゃなかったのか!?」
「うん、FWだよ。今は、DFなんだ」

 氷上くんがさらりと言う。相手のFWさんは、何故か機嫌が悪そうだった。そう言えば、雪合戦の時も混ざっていなかったみたいだし…何かあったかな?

『鬼道からのパスを受け、染岡が上がっていく!!』

 そして、このFWさんは、白恋のDFをタックルで吹き飛ばし、ゴールへあがってくる。力強いけど…紺子ちゃん、大丈夫かな?様子が可笑しい…?

『あぁぁぁっと!!染岡のドラゴンクラッシュは、吹雪に止められてしまった!!』

 あ、見てなかった…ナイスディフェンスって書いておこう。ゴメンね、士郎。次は、ちゃんと見てるから。士郎からのパスを受けた氷上くん。が、相手チームの人に奪われてしまう。白恋は、士郎がずば抜けて実力が高いからな。そこを攻められたらどうしよう?

「次は決めてやる…っ!!」
「行かせないよ…"アイスグランド"!!」

 氷漬けにされたFWさん。士郎は、紺子ちゃんにパスを出したけど…あれ?受け取れてない?って言うか、立っている姿が危ういような…

「紺子ちゃんっ!?」

 珠香ちゃんの声が聞こえた。紺子ちゃんは、足を押さえて蹲っている。まさか、さっきのタックルで怪我したんじゃ…審判さんの「タイム!」と言う声が聞こえて、ベンチを飛び出した。


*。+


 足首が赤く腫れてしまっている。このままプレイを続けたら、怪我が悪化してしまう。けど…白恋に交代選手は、いない。どうしよう。大丈夫?と皆が集まって来た。遅れてきた士郎に、プレイ続行は不可能だと伝える。

「無理はいけないから、今回は休んでね」
「…で、でも代わりのプレイヤーは?」

 雷門中の皆さんも集まって、必死に考える。日本一が弱小相手に11vs10で試合を行うなんて…変な受け取り方をされたら、雷門のプライドが壊れるし…かと言って、士郎の実力を見ない訳にもいかないし…う〜ん、どうしよう。ふと、士郎と目が合った。何故、士郎の瞳が輝いていたのか、その時は考えもしなかった。…そのせいでこんな目に会うとも知らず。

「桃花…代わりに試合に出て!」
「…む、無理無理っ!!だって私、マネージャーだよ?」
「小さい頃、サッカー上手だったじゃん。ポジションもMFなんだし」
「昔の話でしょう?」

 ひそひそ声で話していたつもりが、紺子ちゃんに聞こえてしまったらしい。ジャージの袖を引っ張られた。本当に申し訳無さそうな顔をしている。

「桃花ちゃん、お願い…迷惑かけたくないの…」

 こんな風に頼まれたら、どう断ればいいのか解らなくなる。断れなくなってきちゃった。そんな私に追い討ちをかけるような士郎の一言。

「こんな事もあろうかと、もう一人分のユニホーム、準備してあるんだ!!」
「おぉ、さすが吹雪くん!!」

 物事が知らぬ間にどんどん進んでいく。いつの間にか円堂さんも、私が出ると勘違いしてしまい、

「相手がマネージャーでも、本気で戦うぜ!!」
「だから、私、出るなんて一言も言って無いんですけど」

 拒んでいるのに、差し出されたユニホーム。こんなに大勢の人に迷惑が掛かってしまうんだ。解ってはいるものの、私のような初心者が試合に出たら、もっと迷惑が掛かるもん。やめたほうがいいのに。

「よろしくねっ、桃花」

 …最後はやっぱり、士郎に言い包められた気がする。私は、憂鬱な気分で女子更衣室へ向かった。