二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.43 )
- 日時: 2011/01/04 22:21
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第二十二話【借り出されたマネージャー】
白恋中のユニホームは、防寒対策バッチリで暖かかった。でも、少し動いたら熱くなってしまうんだろうな。まだ動いていない私には、寒くて仕方が無いけれど。さっきまでシャーペンを握っていた左手で右手を包む。はぁ、と息を吹きかけると、さっきよりは寒さを紛らわす事が出来た。
「桃花ちゃん、頑張ろうね!!」
「そんなに心配しなくても、俺たちがいるし」
「そうそう…強引なプレーには、気をつけろよ?」
珠香ちゃんはいつものこと、喜多海くんや氷上くんも応援に来てくれた。私にボールは回さないで、ときつく言って置いたから大丈夫だとは思うけど。相手は、"地上最強"を目指すチーム。何かあったら、私にでさえパスが回ってくるかもしれない。心の準備は、一応しておこう。
『それでは、試合再開です!!』
実況さんの声と共に、ホイッスルが鳴り響いた。士郎がカットしたボール。パスは、珠香ちゃんに出された。…けど、相手チームに奪われてしまう。そしてボールを持ったまま、あの人は…こっちに向かってくる!?
当然と言えば当然だけど…こんなのってあり?プライドが無いのかな、この人は。
「邪魔だっ!!」
さっきの紺子ちゃんと同じ状況。タックルされたら、私なんてひとたまりも無いよ。どうしよう…頑張るしかないのかな?大きく一回、深呼吸をする。迫って来る男の子の隙を見つける為に心を落ち着けなきゃ。じっと見つめると…ほんの一瞬、隙を見つけた。
「"ネジュカット"!!」
ボールの周りに雪の結晶が降り注ぐ。相手が困惑した瞬間に、ボールを取らせて貰った。私がマネージャーだからって、思いっきり油断していたみたい。呆気に取られている。
「何っ!?アイツは、マネージャーだろ!?」
小さい頃は、お父様の影響もあってサッカーをやっていたんだっけ。士郎もいたから、三人で遊んでいたな。フランスに行ってから、ほとんど機会は無いと思っていたけれど…広場で遊ぶ子供達に混じっていたのが、良かったのかもしれない。そこまで腕は、落ちていなかった。…昔の方が俊敏だったのは、仕方が無いけれど。
水色髪の人を抜くと、士郎の姿を探した。マフラーに右手が置かれている。アツヤの人格が呼び起こされたんだ…
「…士郎っ!!」
「おう!!任せとけっ」
下がっていた二人の選手のタックルを弾き飛ばすと、円堂さんが待つゴールまで上がっていった。ここまで来たら、大丈夫だよね。
「吹き荒れろ…"エターナルブリザード"!!」
「"ゴットハンド"!!」
一度は、シュートを止めたようにも見える円堂さん。でも、ゴットハンドを破ったシュートは、鋭くゴールへ突き刺さった。私たち白恋中は、先制点を奪ってしまったようです。
「ゴットハンドが、あんな簡単に破られるなんて…」
「これが"ブリザードの吹雪"…」
マネージャーさん達も驚いている。円堂さんが破られるなんて、思いもよらなかったんだろう。当の本人も、あんぐりと口を開けている。両手を見つめると、次に士郎に視線を移し変えた。何人もの選手を抜いたのに、士郎には疲れが全く見られない。
「…止めたと思ったのに…なんて破壊力だ」
ゆっくりと立ち上がった士郎は…まだアツヤの人格のままらしい。挑戦的な瞳で円堂さんを背中越しに見つめると、にやりと口元に笑みを浮かべた。
「いいか、よく聴け…俺がエースストライカー、"吹雪士郎"だ」
誇らしい様子で見方陣内へ戻ってきた士郎。雷門の選手たちは、そのスーパーディフェンスと素晴らしいシュート力に、目を見開いている。瞳子さんも嬉しそうだった。噂以上のプレイヤーだったんだろう。
「ナイスパスだったぜ!桃花」
「先制点、ご苦労様でした」
まさかアツヤ——人格なんだけど——に褒められるとは、予想外だった。俺のシュート、ちゃんと見てたか?と言うと思っていたのに。ちょっぴり残念だったけど、それは"立派な成長"という事で、喜んであげよう。
「どんなに凄いシュートでも…豪炎寺の代わりは、いないんだ!!」
FWさんがボールを手に取った時、すかさず瞳子さんが立ち上がった。
「そこまで。試合終了よ!!」
雷門の中で、驚きの声が飛び交う。士郎の実力はわかったから、と言う事なんだろう。試合終了で、ようやく胸を撫で下ろした。こんな状況の中でやるサッカーは、やり辛くて仕方が無い。第一、私はマネージャーなんだもん。早く帰りたいよ…
「…これで終わらせて堪るかっ!!」
ベンチへ戻ろうとしていた私たちに向かって、FWさんのボールが飛んで来る。そこでアツヤものらなければ良いのに…好戦的なアツヤは、真っ先に飛びついてしまった。
「俺とやる気か…おもしれぇ!!」
そのままFWさんを吹き飛ばしたアツヤは、エターナルブリザードを放つ。円堂さんに向かって飛んでいくボールの前に二人のDFが立ちはだかった。"ザ・タワー"と"ザ・ウォール"を突き破りながら、それでも衰えないアツヤのシュート。円堂さんは、止める気満々のようで。エターナルブリザードは、突き進んでいく…——