二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.44 )
日時: 2011/01/04 20:44
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
参照: 参照400突破…本当にありがとうございます!!

  第二十三話【頑張ってね】

 円堂さんが技を出して構える。避ければいいのにと思うのは、私だけなのかな。

「あ…」

 シュートは、円堂さんがキャッチすると思っていた。が、ボールは大きく曲がりゴールから外れて飛んでいく。さっき、二人のDFさんに防がれたからかな。止まる事は無かったけれど、コースが変わってしまったみたい。…何気に舌打ちをしないの、アツヤ。

「二人掛でコースを逸らすのが精一杯なんて…凄いヤツだ」

 女の子のDFさんも驚いている。そう言えば、女の子の選手も居たんだ。公式戦って女子も出られるのかな?ジュニアチームは、大丈夫だったと思うけど。

「はい、そこまで!」

 瞳子さんの声がまた響いた。いい加減にしないと、怒られちゃう。ポンポン、と士郎の背中を叩くと大きく肩が上下に揺れた。と同時に瞳の色が変わる。士郎の人格に戻ったんだ。さっきとは大違いだから、皆に驚かれるかもしれないな。

「お疲れ様。あんまり勝手な行動は、慎んでよ?」
「ゴメンゴメン…次からは気をつけます」

 次なんてあるのかな。急に不安が心に忍び寄ってきて、自然と溜め息が零れた。士郎のプレーを近くで見られる日が、今日で最後だったら…そう考えると、士郎の活躍をお祝いする事が一筋縄ではいかなくなるな。

「吹雪くん、桃花さん…貴方達も来てくれる?」

 不安になっている場合では、ないらしい。一瞬、顔を見合わせると急いで瞳子さんの下へ向かった。


*。+*。+


 円堂さんが士郎に駆け寄ってくる。凄いシュートに感動したらしい。瞳がキラキラと輝いていた。士郎も士郎で、エターナルブリザードに触れる事の出来たGKは初めてらしく、にこにことご機嫌そう。

「俺、吹雪ともっとサッカーしたい!」
「うん!僕もキミと…キミ達となら、思いっきりサッカーが出来そうだよ」

 にっこりと微笑んだ士郎を見て、少し胸が痛んだ。士郎にとって一番いい選択の筈なのに、弱い私は、やはり素直に喜べない。駄目だな、私は…

「吹雪くん、貴方に正式にイナズマキャラバンへの参加を要求します。一緒に戦ってくれるわね」

 はい、と答えた士郎。快い返事だった。

「…頑張ってね、士郎」

 出来る限りの笑顔を即席で作ると、幼馴染へ向けた。本当は、寂しくて仕方が無い…不安でしょうがないけれど、こんな良い機会なんて滅多に無いんだもん。私が見送ってあげないでどうするの?

「あのー…桃花?頑張ってねって他人事みたいに言わないでよ」
「え?」

 十分に他人事だよね。…冷たい言い方だったかな?優しく言えたつもりだったんだけど。周りを見ると、雷門の皆さんも呆れ笑いだった。士郎も苦笑い。…あ、あれ?

「桃花…話、聞いてた?」
「うん。士郎、キャラバンに乗るんでしょ?」
「そのちょっと後は?」
「……だから私、頑張ってねって言ったんだよ」

 失笑が辺りに響く。私、失礼な事を言っちゃったのかな。

「桃花さん、貴方にもキャラバンに参加してほしいの。良いわよね」

 瞳子さんの言葉が私に届いた瞬間、世界の時が止まったように感じた…——