二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.46 )
- 日時: 2011/01/15 19:13
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第二十四話【いつもみたいに】
つい先程、円堂さんに手渡された雷門中のユニホーム。北海道で着るには少し寒すぎるけど、素敵なデザインだった。でも、このユニホームを着る権利が、本当に私にあるのでしょうか。
「わぁ、桃花も似合ってるね!」
無垢な笑顔でキミは言う。士郎の方が似合ってるよ、と言おうと思ったが"照れ"からか上手く口が回らなかった。自然と細まる瞳を、隠す事なく士郎に向ける。返事の代わりに微笑みかけた。
「merci……でも私、」
「今更、何を言ってるの?遠慮する事なんて、一つも無いよ」
遠慮と言うのかな?そうじゃなくて、私は……
「宇宙人を倒す為に戦うんでしょ?私なんかじゃ力になれないのに」
何も出来ない弱虫の私に出来る事なんて、ちっぽけだもん。きっと、足を引っ張るだけなのに。
確かにサッカーは、小さい頃からやっていて好きなスポーツなの。お父様とお爺様の影響なんだけど。だけどフランスにいる間は、あくまでもヴァイオリンが一番だった。お遊び程度しかサッカーをやっていなかった私が、日本一に輝いた人たちと、しかも地球を救う戦いに関わるチームへ仲間入りなんて、荷が重過ぎる。
『桃花さん、貴女にもキャラバンへ参加してほしいの』
瞳子さん——今となっては、私の監督さんだけど——の言葉が耳へ届いた時、本当に驚いた。この戦いを制せば、北海道に居られる事はわかった。別れる事は無いと。でも、負けてしまえば……ボロボロになるまで傷ついて、母校を失う事になる。身体についた傷が消えても、学校を失った生徒の心の傷は、癒すことができない。
「私は……自信が無いよ」
本音は、ふいに零れてしまうものだ。心配させたくない相手にでも、呟いてしまう事がある。恐ろしいけど、それが"本音"。士郎は何かを言おうとして口を開き、また閉じた。そして、息を吸うとにっこりと私に笑いかける。本当、天使の微笑みだな。
「桃花、笑って!」
「……え」
「いいから、いつもみたいに笑って!」
どうしてと聞くと、どうしてもと笑う。無邪気に笑う士郎を見ていると、笑えない筈の私まで笑み崩れてしまった。笑ってる場合じゃないのに、溢れてしまったものは抑えられない。
「桃花が笑うと、みんな安心するんだよ」
私が笑った事を確認すると、急に真面目な顔になった士郎。突然、何を言い出すのやら。
安心って……そんなこと、初耳なんだけど。
「落ち着けてリラックスできるんだ。だから、皆の為にも笑って!」
士郎が笑ってるだけで十分だと思うんだけど、そう言ってくれた士郎の気持ちが嬉しくて、気付けば笑っていた。雷門の皆さんは、紅白戦をやるって言っていたっけ。遅れたら迷惑なんだってわかってるんだけど……今は何だか、この空間から離れたくなくて。通りがかった教室の時計から、パッと視線を逸らした。