二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.61 )
- 日時: 2011/01/26 16:51
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第三十一話【勝負の行方】
どこまでも響き渡るホイッスル。空を覆いつくした雲目掛けて、サッカーボールは、飛んだ。まっすぐに投げられ、まっすぐに落ちてくる……——
最初にボールを奪ったのは、士郎だった。
「やっぱり、吹雪が押してるか……」
「いや、染岡も吹雪についていってるぞ!」
練習の成果が、二人とも充分に発揮されている。"風になる練習"、効果はあったみたいだね。私は、雷門のチームメイトである以上、どちらとも応援しなければならない。でも、本音を言ってしまえば……士郎に勝って貰いたいな、なんて。力を付けた染岡さん。士郎は、気付いているだろうけど……手ごわいんだから、甘く見てると負けちゃうね。
「本当に展開が読めない……」
すると油断したのか、士郎はボールを奪われてしまった。おまけに吹き飛ばされて、どんどん差は広がるばかり。負けちゃう、なんて思った私。ゴメンね、士郎。別に悪気は無いんだよ。呆然と眺めていた。が、士郎が猛スピードで追い上げてくる。例えるならば……"猛吹雪<ブリザード>"のようだった。
その時見えた士郎の横顔。瞳は、綺麗な橙色で。
「やっとついてこられるようになったじゃねーか……おもしれぇ!!」
激しい攻防戦が巻き起こる。一時、士郎がボールをキープし、ゴール前へ持ち込もうとした。心臓が高鳴る。きっと、このまま行けば士郎は、シュートを決められる……でも、私は見落としていた。勝負の真っ最中であるこの校庭に、小動物が迷い込んでいたことを……
一気に攻めあがろうと駆け出す士郎。が、染岡さんの足元には、子リスがいた。このまま蹴飛ばしでもしたら、リスが可哀想すぎるよ……っ!!
「貰ったぁぁぁ!!!」
その事に気付いていない染岡さん。刹那、迷いが見えた士郎の隙を突いて、ボールを奪い取る。そして、強烈な必殺技を無人のゴールへ打ち込んだ。あれ、士郎の負け?気付けば、瞳は穏やかな普段のものへ戻っていて。雷門の皆さんが染岡へ駆け寄る中、すっと士郎に手を差し出した。
「今回は、僕の負けだね」
「次はきっと勝てるよ。それに……」
雪の花を咲かせた大きな木。上から私たちを見下ろしていたのは、子リスと母親と見られるリスだった。どうやら再会できたみたい。
「……リスも、応援してくれると思うな」
すっかり興奮し、北海道の寒さも忘れ始めた皆さん。そんな中、頭上の雲が怪しく動き始めた。見た事の無い流れ方。本当に、風に流されて形を変えているのだろうか。私には、そう思えない。
「おい、円堂!!あれって……」
「……とうとう来たか、レーゼッ!!」
やはり自然の現象では無かった。思わず目を逸らしてしまうほど強い光の中から現れたのは、奇妙な格好をした人間だったから。でも、本当に人間?まさか、彼等が円堂さんが言っていたチームなんじゃ……
「愚かなる人間どもが」
「エイリア学園……これ以上、サッカーを破壊の道具にはさせないっ!!」
怒りや敵対心、そんな感情ばかりが伺える表情で円堂さんは、"レーゼ"と呼ばれた少年に吠え立てる。そんな私たちにレーゼは、小さく鼻で笑った。私たちを下に見ているという考えが、むき出しである。この人たちが、破壊活動を続けている"エイリア学園"の生徒……星の使徒なんだ。
円堂さんが蹴りつけたボールを軽々とキャッチしたレーゼ。私たちは、本当に…地球を救う戦いに挑むんだ。でも、大丈夫なのかな?私が地球を救うんだ、みたいな自信は一切無く、未知数な相手との勝負に不安が募るばかりだった。