二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.64 )
日時: 2011/01/31 20:14
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)

  第三十二話【私たちの未来の為に】


 辺りには、見慣れないカメラやマイクばかり。地球の運命が決まる世紀の一戦は、テレビなどを通して全国に放送されるらしい。
 けれど、私にはそんな光景、まったく見えていなかった。白恋中を守る為に、仲間の為に戦わなければならない。"雷門"という選ばれた者のみが背負うことの出来る戦士の証は、私を緊張させるには足りすぎていた。

「白恋中を守ってね!吹雪くん、桃花ちゃん」
「うん!皆のことは、僕たちが必ず守ってみせるよ」

 嗚呼、どうかスタメンでありませんように。私がフィールドに立っても足手まといになるだけ。瞳子さんがどんな考えを持って私をキャラバンへ呼び込んだのか、想像もつかない。こんな私じゃ、フィールドに立つのが精一杯だよ。
 エイリア学園のジェミニストーム。彼等に怯えている様子は、見られない。絶対的王者の如く、自身や威厳が満ち溢れていた。嗚呼、ますます自身を失っちゃう。
 円堂さんたちは、真剣な眼差しでジェミニストームを見据え……拳をぎゅっと胸の前で握り、突き上げた。絶対に勝ってやる、という闘争心が露わになっていて、チームメイトなのに、ちょっと怖いかも。でも、今まで悔しい思いばかりしてきたんだよね。私も力になれるのかな?エイリア学園を倒して、大切な人を守りきり、救え切れなかった心の傷を癒すことが。

「桃花ちゃん」

 そこには、切なげな瞳の珠香ちゃんがいた。恐怖からか、身体が小刻みに震えている。やっぱり、いざ敵本人を目の前にすると、テレビの中より怖いもので。目も薄っすらと、潤んでいる。

「がっ頑張ってね!無理はしちゃダメだよ?……怪我しないでね。私、ずっと見守ってるから。だから、だから……」

 どうして泣きそうなんだろう。もしかして、私の不安が伝わっちゃったから。嫌だな、そんなの。私、珠香ちゃんには笑っていてほしいよ。守りたいのは、仲間の涙じゃない。心からの笑顔だ。それだけは、言い切れる。

「……絶対、皆を守るから。それに私、丈夫なんだよ?誰も傷つかないように、戦い抜いてみせるから。笑ってて!」

 何だかさっきの士郎みたい。それでも、珠香ちゃんはだいぶ落ち着いたようで。元気な笑顔に戻っていた。嗚呼、私まで元気にしてくれるこの笑顔。言ったからには、全力で守らなければ。

「心配してくれてありがとう、珠香ちゃん」

 肩から腕にかけて、流れるように撫でる。赤み帯びた頬は、北海道の冷気でなおるだろう。ぎゅっと珠香ちゃんの手を包み込み、笑いかけると、雷門のベンチへ急いだ。もうすぐ、戦いの始まりを告げる笛が鳴る。出来る限りのことはしよう。私たちの未来の為に。