二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.78 )
日時: 2011/02/10 10:43
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)




  第三十五話【雷門の反撃】

 ついに、後半を告げるホイッスルが鳴り響く。士郎はFWにあがり、私はその背中を眺める形。まさか本当に、試合出場しちゃうなんて……いざ本番となると、緊張しないわけがない。何度も深呼吸を繰り返し、自分を落ち着かせようと必死だった。

「奴等は、我々の動きに対応しています」
「人間どもめ……この戦いが無意味だということを教えてやる……!!」

 切れ長の瞳は、キッと私たちを睨みつけたが、いまさら恐怖を抱え込んでも遅い。この怖さを跳ね返すくらいの気持ちで試合に臨まないと。円堂さんの声が私たちを後押しし、後半は点を取る為、積極的に攻めるようにした。私は、そんな皆さんをアシストしなければならない。
 "アイスグランド"でボールを奪った士郎は……また何かを呟き、瞳を橙色に変えた。士郎とアツヤが、入れ替わった瞬間でもある。

『速いぞ、吹雪! まるでフィールドを駆け抜ける雪風のようだ!』

 そのまま果敢に攻めあがる士郎を助けるため、相手のボールを奪いに行く。何とか染岡さんに通ったものの、士郎は勝手にパスを塞ぎ、ゴール前へと行ってしまった。これには染岡さんもお怒りのご様子。でも、この行為は士郎ではない士郎のプレイなのであって……ちょっと複雑な私。
 それにしても相手は、どうやってコミュニケーションをとっているのでしょう?

「……!? "フレイムダンス"!!」

 一之瀬さんがボールを奪う。優雅なディフェンス技。流石、雷門イレブンだとしか言いようがない。一之瀬さんのボールは、士郎にまわる。そして士郎は……染岡さんにパス!?

「行け———っ!!」

 水流のような動きで、青いドラゴンが現れた。そして、GKをすり抜け、エイリア学園のゴールへ突き刺さる。人間が宇宙人からゴールをもぎ取った瞬間だった。

「同点ゴールが……決まった……」

 歓喜溢れる声が染岡さんを包み込む。やはり、その輪の中へは入りづらくて。士郎と共に——人格としてはアツヤなのだけれど——その様子を眺めていた。ふと気になり、士郎に尋ねてみる。どうしてパスを出したの、と。

「俺がシュートを打っても、あの状況じゃ止められてただろ。だから染岡にパスを出した。それだけだ」
「……昔のアツヤじゃ考えられない」

 俺はそこまで幼稚じゃねーよ!
 まだまだ幼いアツヤは、ふいっとふてくされてしまった。うーん、やっぱり幼いような。でも、本人に言ったらもっと怒るだろうから言わないつもり。

「あの技は、"ドラゴンクラッシュ"の進化系——"ワイバーンクラッシュ"と名づけましょう!」

 目金くんの解説を納得しながら聞き流していた。すごいね、なんてアツヤに話題をふると、やはり流される私。でもその後、ちゃんと返してくれたから、やっぱり優しいなと思う。まあ、染岡さんの新必殺技とは全く関係ないんだけど……

「決勝点は、俺が決めてやっから」

 らしいです。その言葉を信じて、私ももう少し、頑張ってみましょうか。