二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.86 )
日時: 2011/02/20 14:44
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 8pbPlA7p)




  第三十七話【勝負の行方は……】


 呆然と立ち竦むレーゼ。当たり前か。自分のシュートが止められたのは、今回が初めてなのだから。瞳は、初めて生まれた"恐怖"という感情に支配され、闇黒へと突き落とされた。そんなように受け取れる。負けを知らなかったから、なんだよね。レーゼが可哀想に思えたけれど、サッカーで人を傷つけた人——宇宙人、地球外来生物なのだ。そんな情など抱いていたら、限が無い。

「我々の、シュートが……そんな、バカな……!!」

 その間にも、大きく弧を描いたサッカーボールはエイリア学園陣内へと回されていた。カウンター攻撃、大成功かな。染岡さんに渡ったボール。そのまま持ち込み、シュートを狙う。……が、諦めずに追ってきたDF二人が立ちはだかる。そして、染岡さんは……

「……吹雪っ!」
「お、おう!決めるぜ!」

 士郎にパス、なんて。試合中に友情が生まれたみたい。放たれたシュート、"エターナルブリザード"は物凄い威力だった。相手GKを吹き飛ばし、冷気を纏ったままゴールへ突き刺さる。そして、その瞬間——長い笛が鳴り響き、辺りを静寂へ包み込んだ。そう、私たちの勝利を告げる、ホイッスルが。

「俺たちの……勝ち?」

 円堂さんが小さく呟き、そして大きな雄たけびをあげた。世紀の一戦に、ようやく決着がついたのだ。私たち、人類の勝利として。喜びに湧くメンバー、微笑む監督、安堵の溜め息をついた観客たち。士郎と目が合い、おめでとうと口パクで伝えようとした、その時——新たな戦いを告げる、幕が開く。

「え……?あいつ等は……」
「セカンドランクチーム、"ジェミニストーム"。お前達はもう——"用済み"だ」
「で、デザーム様!?」

 うろたえたような表情のレーゼ。が、それが最後に見たレーゼだった。次の瞬間には、白銀の光が彼等を包み込み、気付けば——その姿は、消失していた。ざわつく校庭。唖然とする私たちを余所目に、デザームと呼ばれた青年は言う。

「……我々は、エイリア学園ファーストランクチーム、"イプシロン"だ」

 冷酷な笑みを放つ彼等。地球人と宇宙人の戦いは、終わりと同時に始まりを迎え、新たな戦いが幕開けした。この戦いが、この経験が、私たちをどう翻弄するのか、まだわからない。が、この時すでに、運命が大きく狂い出していたことに気付くのは、後悔ばかりが自分を襲う、未来の話なのだ……——