二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.89 )
日時: 2011/02/27 12:53
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 8pbPlA7p)



    第四十話【別れを告げ、すべては始まる】


「あれ……皆、来てくれてたの?」
「桃花ちゃん、待ってたよ!」

 校庭にいたのは、雷門中の皆さん、士郎、そして白恋イレブン。結構、朝が早いから寝ていると思ったのに。なんだか悪いな。私たちだけの為に、わざわざ早起きさせちゃうなんて。罪悪感からか、無意識に謝罪の言葉を口にする。すると何故か突然、怒られた。

「何言ってるの!? 桃花ちゃんは、大切な仲間なんだから。見送りに来るなんて当たり前だよ」

 顔をやや紅潮させて、早口で怒る珠香ちゃん。紺子ちゃんも、頬をぷくりと膨らませている。氷上くんも喜多海くんも空野くんも、後ろで小さく頷いていた。なんだか嬉しくて、これから離れ離れになることも忘れて微笑みかける。士郎は、喜多海くんたちと話していた。そろそろキャラバンに乗らないと。そう思い、女子メンバーとハグを交わしたあと、士郎について行った。が、

「桃花ちゃん、ちょっと待って!」

 紺子ちゃんに食い止められる。雷門の皆さんがポカンとしている間に、透明な包装紙に包まれた何かを手渡された。よくよく見てみると、それは薄い桜色に染まった、綺麗なスカーフで。私がポカンとしていると、珠香ちゃんが説明してくれた。

「お守りだよ!桃花ちゃんと士郎くんが、無事に帰ってこれますようにって……だから、その、頑張ってね」

 涙声にかわりながらも、言葉はちゃんと私に届いた。紺子ちゃんの瞳も潤んでいる。二人をもう一度ハグすると、絶対に帰ってくるからね、そう呟き、キャラバンに乗り込んだ。
 マネージャーさんの隣に座らせられる。窓の外では、皆が手を振ってくれていた。まだ、一緒にいたかった。切にそう思う。

「古株さん、お願いします」

 そんな願いは、瞳子さんのよく通る声にかき消されて。無機質なエンジン音が響き、雪が静かに振り出した北海道を駆け抜けていく。別れなど、あっという間だった。さっきの情景が、スローモーションのように浮かんでは消え、浮かんでは消える。儚いものだ。
 丁寧に袋を開け、スカーフを手に取る。一度洗ってくれたのか、新品にしては柔らかかった。

「可愛いスカーフですね」

 春奈さんが笑う。私を慰めようとして、そんなことを言ってくれたのだろうか。笑い返すと、スカーフを折り、頭へ持っていく。両手を伸ばして頭の頂上でリボン結びをしてみた。

「うわぁ……素敵!なんだかうさぎみたいね」
「うさ耳スカーフです。似合いますかね……?」

 口々に褒められて、少し照れくさかった。髪とスカーフに優しく触れ、心の奥で密かに誓う。私は絶対に、大切なもの全てを守りきると。仲間も笑顔もサッカーも、士郎だって絶対に。出来る限りのことをしよう。いつか胸を張って、白恋中に帰ってこれるように。凱旋できるように、と。
 どんなに辛くとも、私は耐え抜いてみせる。粉雪をぼんやりと眺めながら、そう思った。


 ——こうした大切な人との別れから、私の戦いは、幕を開けたのです。