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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 夢の残骸 ( No.100 )
- 日時: 2011/02/05 11:10
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
「……でな、豪炎寺がすっごいシュートを打ったんだよ!」
夢中になりながら、彼はサッカーの話をする。茜色の空は、もうじき夜の闇へと姿を変えてしまう。なら、せめて空が表情をかえる一瞬まで円堂くんと話していたかった。理由なんて無い。一つあげるとしたら、それは彼が私にとって大切な存在だから、だと思う。ただ隣にいられるだけでいい。今の円堂くんにとって、恋人はサッカーだから。入部したての頃から一緒にいた私が一番よくわかっている。それに、私が好きなのは———サッカーをしているときの円堂くんなの。ずっとずっと、円堂くんがサッカーしている傍にいられるなら、それでいいかな。好きとか嫌いとか抜いて、ただ時間をともにすることが出来れば。
……なんてね。きっと私は、そこまできっぱり割り切れる勇気を持ち合わせていない。ずっと隣にいたい。その笑顔をむけられるのは、私だけでいいの、なんてね。
「おっ!なぁ秋、夕陽がすっげぇ綺麗だぞ!!」
「あ……ほんとだ。綺麗だね」
鉄塔広場から臨める夕陽。あの日と変わらず、いつも通り、美しい。この風景を円堂くんと見られる私は、幸せ者なんだろうな。でもね、円堂くん。私だけが幸せ、なんて感じていたんじゃダメなの。円堂くんがどう思うかによって、この幸せに本当の価値があるのか別れるんだよ。つまり、きみが私に抱く感情によって、私の幸せが価値のある宝石に変わるか、無意味な石ころへ変わる。磨き方一つで、こんなに大きく変わるんだね。
「……ねぇ、円堂くん」
———本当はこの景色、誰と見たかった?
( 私の想いは、宝石?石ころ? )
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