二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 時代劇物?久々更新!! ( No.103 )
- 日時: 2011/02/06 16:01
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第十一話【再会?目撃者との対面】
「吹雪、ごめん。ほんとーにごめん」
「あっあの時は、簪に夢中で焦ってたというか」
「……僕、簪よりも影薄いんだね」
三人で吹雪に謝っているものの、一向に元気を出してくれそうにない。それどころか、桃花の言葉によってより一層、凹んでいる様子。お菓子を奢ると言っても聞く耳を持たない。結局のところ、吹雪の気が済むまで謝り続けるしか、この場を凌ぐ方法は無いようだ。円堂も彼なりに謝ってはいるのだが、果たして、この声は吹雪に届いているのだろうか。
「……どうしたら吹雪さん、許してくれますかね?」
「にやにやしてるんなら手伝えよ、ここまで来てやったんだからさあ」
葵の視線の先には、他人事だからと見物している三人の姿が。菓子屋へ案内した豪炎寺と虎丸、そして怪しい少年は暢気に湯のみを手にしている。それだけでも腹立たしいのだが、三人の会話のなかで微笑が見られることが、それ以上に腹立たしい。
「ほう……少女剣士か」
「それだけでも珍しいが、おまけに所持している剣は名刀だ」
「実力は、未知数ですよ!」
葵は、大きく溜め息を吐いた。自分は、吹雪を慰める為に菓子屋へ来たわけではない。本来の目的を忘れかけてきたが、少女剣士が自分なのかどうかを確かめに来たのだ。隙さえあれば逃げたい。面倒なことは御免だ、本当に。
「人の店で何を騒いでいるの?」
店の奥から声が聞こえる。ふと顔をあげると、葵や桃花と歳の近そうな少女が立っていた。続くようにもう一人、騒ぎを聞きつけてやってくる。とっさに、顔見知りかどうか確かめようと脳を回転させたが、覚えているはずが無かった。あれだけの数の野次馬、一人一人を覚えていられたら"天才"と呼ぶに相応しいだろう。
「気にしないで下さい!お店とは全く関係ないので」
「そう……?って、何があったのよ」
栗色の長い髪を揺らした、品のある少女が虎丸に真相の理由を促す。大人びた表情は、とても同い年とは思えなかった。もしかしたら、背が近いだけで年上なのかもしれない。凛とした瞳に、思わず見惚れてしまう。
「その娘たち……見覚えがないけど」
「当たり前だ。さっき江戸の町へ到着したんだからな」
「へぇ。鬼道くんの知り合い?」
あの怪しい少年は、鬼道というのか。珍しい名前だと思ったが、あえて口にはしない。奇妙な身格好に、軽く恐怖を覚えた。さて、これからどうするか。二人とも、自分と面識が無いことは確かだ。鬼道だって初対面である。この店にいる少年少女の中で、自分が剣を抜いたことを知っている者はいない。ならば、なぜこの店を訪れたのか。新たな疑問と葛藤している間に、気付く。この疑問は、無意味だったのだと。また一人、店の奥から出てきたのは……
「おっくれましたー!って、あれ?貴女は……」
「……嘘だろ」
悪い侍から救ったばかりの、藍色の髪の少女だったのだ。