二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- そしてきみは笑うんだ。 ( No.104 )
- 日時: 2011/02/07 17:47
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
- 参照: 多分……ロコ→夏→円
コトアールの照りつく日差しは、今日も相変わらず。隣で、優しい赤茶色の髪がふわっと揺れた。熱中症対策からか、ナツミは大きな帽子をかぶっている。ぼんやりと練習を眺めていたナツミ。そんなナツミに見惚れてるボク。澄んだ瞳を覗き込みたいと、少し前のめりになってみた。
「……どうしたの?ロココ」
「ううん。なんでもない」
大丈夫なら、早く練習を始めなさい!
少し強めの口調。はいはい、と生返事を返すと"はい"は一回よ、と怒られた。そうだ、ニホンではそーゆう決まりがあったんだっけ。そういえば前にもナツミに怒られたなぁ。まあその時は、コトアールとニホンじゃ文化が違うんだから仕方が無いって、師匠が助け舟をだしてくれたけど。
「はい、サッカーボール。決勝戦はもうすぐなのよ?そしたら貴方たちは……」
一人、ニホンの文化について物思いに浸っていたボク。突然、途絶えてしまったナツミの声は、ボクがもう一度、彼女の瞳をみつめる前に発せられた。今まで聞いたことがないくらい、
「日本代表の……」
———切なくて、
「彼等……」
———哀愁漂う、
「……"イナズマジャパン"と」
苦しげな声色で。
ナツミはあの時、どんな思いでエンドウマモルに別れを告げたんだろう。オルフェウスとの試合のあと、凛とした表情でマモルに"さよなら"と言っていたっけな。ナツミは元々、イナズマジャパンのメンバーだったんだから当たり前か。ボクはまだ、辛い別れの経験が無いからわからないけど、きっと悩ましいんだろう。ナツミがイナズマジャパンへ帰ってしまうくらい、苦しくて辛いんだろう。
だからボクたち———コトアール代表「リトルギガント」は、祖国の為、家族の為、師匠の為、ナツミの為、全力でイナズマジャパンに勝たなくちゃいけない。ボクたちを支えてくれた人たちに恩返しをする為にも。
「へーきへーき!ボクたち、絶対に勝ってみせるから!」
「……そのヤル気なら、大丈夫そうね」
呆れ気味だったけど、ナツミはにっこり笑ってくれた。ナツミが笑うと、ボクも嬉しくなる。あの時、重苦しい思いをした分、ナツミには笑ってほしいから。大切な人に笑っていてほしいから。マモル、ボクは絶対、イナズマジャパンに勝って見せるよ。
「じゃあボク、練習に行ってきます!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「あー!"はい"は一回だよー」
「……つべこべ言わずに練習なさい!」
ボクは逃げだすように、ゴーシュたちのもとへ駆け出した。
ボクはまだ、気付かない。いや、気付けない。彼女を笑顔にできるのは、ボクでは無いってことを。ナツミの笑顔を守れるのはボクだけだなんて、ただ自惚れているだけなのだと。ボクはまだまだ———弱虫なのだ、と。
ナツミは一人になったあと、広大な青空と"あの"少年の包容力溢れる笑顔を重ね合わせ、過去の記憶に思いを馳せる。ボク以外の少年を想い———そしてきみは笑うんだ。
「……彼は貴方と似ているわ。円堂くん」