二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 消える瞬間、 ( No.106 )
- 日時: 2011/02/11 15:24
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
- 参照: 会話文いれるタイミング、誰か教えて下さい←
試合終了を告げる甲高いホイッスル。その音がまだ、自分の耳に残っていることに今更ながら気付いた。ぼんやりと足元に視線を落とす。何も考えられず、ただただ後悔と敗北の二文字に浸っていた。それしか、できなかったから。でも、皮肉なことに頭を真っ白にすることができない。俺の淀んだ目には今も尚、試合時の光景が広がっていて。お手上げだった。俺たちの全てをぶつけても、彼等は揺らぐことなくマモルたちへの挑戦権を手に入れたのだ。キャプテン、俺じゃ駄目だったみたいだ。力不足だったんだよ。まだ、未熟だったんだ。相手チームの情報がほとんど掴めなくて、苦労したさ。でも、情報だけが全てじゃない。実際に戦って、初めてわかることもあるんだって、そう思って今日、FFI準決勝に臨んだのに。ノーマルシュートにゴールを割られた。パスも全てカットされた。俺のシュートも、片手一本で簡単に止められた。それでも、絶対に勝ってやるんだって、泥塗れになりながら走り続けた。走って走って走って、行き着いた先は———イタリア代表「オルフェウス」の大敗。何も通用しなかった。不甲斐なさで一杯になった。情けなくて、苦しくて。相手は、必殺技を使用しなかったのに。腕慣らし程度にしか思われてしなかったのだろうか。そう思うと余計、悔しくてたまらない。相手が強かったのか、自分達が弱かったのか。そう聞かれたら、俺は即答できないだろう。前者も後者も、正しい答えなのだから。だからこそ、認めたくない。俺たちが信じてきたものが、一瞬で崩れ去った、そんな気がするから。どれだけの汗を流しただろう。どれだけ悩んだだろう。キャプテンの不在、監督の真の姿……FFIヨーロッパ予選の時から、今日まで幾多の壁を乗り越えてきたつもりだった。俺だけの話では無い。「オルフェウス」の名を胸に共に戦ってきた、仲間たちもそう思っただろう。嗚呼、あの努力してきた時間はなんだったんだろうか。俺たちが信じてきたものは所詮、何一つ結果を残せない、ちっぽけな光だったのだろうか。それなら納得がいく。俺たちがイナズマジャパンに勝利できたのは、灯火が消える直前だったから。滅亡してしまう前に、信じてきた虚像が盛り返したから、なんだろう。
じんわりと視界はぼやけ、はっきりとした世界は消失。気持ち悪い暖かさを残す、無意味な液体が頬を伝い、唇に差し掛かったとき———妙にしょっぱかったのを、今でも鮮明に思い出すことができる。