二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

ばれんたいん! ( No.109 )
日時: 2011/02/14 19:34
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: F343Lai/)



「おお、すげー!」
「うまそぉ……これ、マジでお前が作ったのか?」
「母ちゃん以外にチョコ貰えるとか……予想外だ、うん」

 夜桜中学サッカー部。とある部室で、数名の男子が騒いでいた。原因は、女子部員が持って来た手作りチョコレート。"義理"であることは当たり前なのだが、やはり貰えないよりも、貰えたほうが嬉しい。カレンとなつめが持参したチョコレートは、見た目からして不味いわけがないのだった。まあ、なつめはともかく、カレンのチョコレートは誰かの手伝いがあったに違いないが。
 本来ならば注意しなければならない立場にある監督も、渡された思いがけないチョコレートに、相好を崩していた。去年は、今は居ない三年生に上手く言い訳されてしまった為、今年こそは没収すると意気込んでいたのだが、その決意はあえなく意味を無くした。なつめのあの笑顔に、NOと言えるはずがない。カレンに逆らったなら、冷酷な視線が毎日突き刺さるのだろうから。意外と意思が弱い男、それが夜桜の監督である。

「で、葵はどうしてくれないんだ?」

 学校内で包みを開き、口を一杯にしている飯島を殴りながら、森本はふと尋ねた。去年は、葵もバレンタインチョコを配っていた為、少なからずの期待はあったのだろう。手作りではなく市販のものだったが、この際、そんなの関係無い。貰えるだけ貰っておこう。そして、クラスの男子たちに自慢をしてやるのだ。……そんな考えが、丸見えである。

「あー、ごめん。今年、チョコあげる予定ないんだ」
「去年は、売ってるやつ、くれたのに?」

 部室内でのリフティングは禁止されている。が、未だ約束を破り続けるキャプテンを、監督はキッと睨みつけた。慌ててボールを腕に抱く。気を付け、の姿勢のまま、がっかりしたように苦笑してみせると、

「手作りにチャレンジしたら、失敗しちゃったんだ」

 失敗記念で撮ってみましたー!
 葵は、鞄から一枚の写真を取り出すとひらひらと天井にかざした。カレンがそれを奪い取り、勢ぞろいした部員たちと円になって写真を眺める。映っていたのは、綺麗なピンク色のチョコレート。大失敗だよ、と呟く葵に、どこがだよっと突っ込む飯島。部員達の輪に入り込み、写真を奪い返すと、自分でもまじまじと見つめ、笑い出した。もう笑うしかない。そう、言わんばかりに。

「おいしそうなストロベリーチョコじゃないですか」
「ううん、あのね、そのちょこね」

 笑いを堪えるのに必死らしく、しばらく腹を抱えて笑い転げていた。早く言え、と何処にあったのかハリセンで殴られる。ようやく、話せる状態にまで落ち着くと、

「だって僕、ミルクチョコレートを溶かしてたんだよ?」

 冷蔵庫から取り出したら、変色してましたー!
 ゲラゲラと笑いが止まらない葵を、その場にいた者は、ただ呆然と眺めるしかなかった。

*。+

「……俺、今日は手作り貰わないほうが良いのかな?」

 2/14と表記されたデジタル時計を見つめながら、今日起きるかもしれないバレンタインの悲劇に、早くも嘆き始めていた森本なのだった。



   ( 森本ー!僕のちょこれーと、食べるー? )
   ( ああ!全力で遠慮する! )


***
バレンタインの小ネタでしたw 大丈夫。葵ちゃん、そこまで料理できなくないですから(キリッ
ただ、妄想が止まんなくてこんな結果に……ゴメンね森本くんw
以上、バレンタインスペシャルでしたー♪