二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 【08】ありふれた日常のひとコマ-04 ( No.115 )
- 日時: 2011/02/21 18:04
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 8pbPlA7p)
とある、コンピューター室。静寂の波紋が広がる室内での唯一の音は、キーボードをカタカタを叩く音のみだった。パソコンの液晶が放つ人工的な光が、その人物の顔を不気味に照らす。青白く映し出された横顔は、あるサイトのページを見つけるとにやりと笑った。キーボードの音は止み、マウスのクリック音に変わる。その音が響く度に、目元は益々、嬉々とした灯りを燈すのだ。
視線の先に掲載されていたのは———、一人の少女の写真。幼さが残る笑顔が、バッチリと写真に収められていた。
「見つけましたよ……———"藤浪 葵"さん」
勝ち誇ったかのように、ひたすら笑う。この笑い声が消え去るまでには、どれほどの時間が掛かるのだろうか。部屋が再度、静寂に飲み込まれる時には既に、その人物は部屋を出ていた。今ここで何が行われたのか。真実を知る者は、いない。
*。+
食欲を湧かせる匂いが、辺りに漂っていた。空腹のためか、意識を浮つかせていた三人を現世へ呼び戻してくれたのは、雷雷軒の人気メニュー、醤油ラーメンである。豪快に置かれたラーメンにいち早く気付いた円堂は、すでに割って待っていた割り箸でラーメンをつついた。そんな円堂を横目に、豪炎寺と鬼道も続いて割り箸を割る。無言で食べ続ける三人に、店主である響木は、思わず声を掛けた。
「相変わらず、いい食べっぷりだなぁ」
「ここのラーメンは、いつ食べてもおいひい……」
円堂の短い、かつわかりやすい感想を最後に、もう誰も言葉を発しなくなった。微笑ましい光景なのだろうか、響木は穏やかな表情で見守っている。無言といえど、三人はとても幸せそうに麺をすすっているのだ。作る者として、嬉しくないはずがない。
「ごちそうさまでした!」
あっという間に空っぽになった器。きちんとそろえられて置かれた割り箸と、無造作に放られた割り箸。ご丁寧に袋に戻されていた割り箸。誰がどこで食べていたか、丸解りである。
「響木監督、ご馳走様でした!」
「ああ、気をつけて帰れよ……円堂、何か見つけたか?」
蹲ってしまった円堂。気分が悪いのかと心配したが、手元には古いサッカー雑誌があった。一年前のものである。倉庫を整理したところ、捨てそびれたと思われる雑誌が五、六冊でてきたのである。それを円堂が目敏く見つけ、開いているということだ。
「これって……」
「見たいのなら持って行け。だから今日は早く帰れ」
「いや、そうじゃなくて……」
ランダムに開かれたページ。覗き込んだ豪炎寺と鬼道も、驚きを隠せない様子だった。驚きの事実を知ってしまった放課後のこと。この先の毎日が、そう優しく過ぎ去ってくれるはずがない。なにせサッカーバカ、円堂守に知られてしまったのだから。
「ここに映ってるのって……葵に似てないか?」