二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 優しいルシフェル 【イナイレちまちま集】 ( No.14 )
日時: 2010/12/03 20:30
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: ja6QJnOq)


 【優しいルシフェル】


 『ずっとずっと、傍にいるから』

 そう言ったのは、間違えなくキミだった。涙でぼやけていた視界。それでも優しい笑顔が僕に向けられていることが嬉しくて、また泣いた。背中を何度も何度もさすってくれて、それ以上の言葉は無かったけど気持ちは、きちんと届いていた。
 だけど…本当は違っていた。届いてなんかいなかった。ただの僕の思い過ごし、それだけ。

 ——優しさなんて、本当は持ち合わせてなかったんでしょう?

 弱くて愚かでどうしようもない、そんな僕だから…こんなにも簡単に騙されてしまったんだね。あはは、もう笑うしかないや。どうしてこんな結果しか出ないんだろう。僕の信じたものは、いつだっていとも簡単に崩れていくんだ。ガラガラと、不気味な音を…恐怖に縮こまった身体全体に響き渡らせて。
 
 "孤独"

 気づけば僕は、一人ぼっち。それで良かったんだ。人の暖かさに触れた事なんて無かったから。知らないものを求め続けても、儚い夢でしかない。そんなのは、苦しいほどに解りきってる。
 
 "暖かさ"

 キミに出会ってから、初めて…人の暖かさをしった。こんなにも素敵なものなんだって、こんなにも良いものなんだって。いつからか、この優しさに溺れ始めた僕。一度、覚えてしまったら抜け出せないものだと、そんなの知ってた。それでも…それでもいいと思ってしまうほど、優しさは僕に必要だった。

 ——結果的には、その考えが浅はかだったんだけど。

 "天使"のような人だった。優しさに満ち溢れ、大勢の人にも慕われていた。僕には、眩しすぎるほどに…美しかった。
 
 ——その優しさも、所詮は見て呉れだった。

 ここまで言うと、ちょっと可笑しいかもしれない。あの人だって最初からあんなヤツでは無かった筈。昔は、あのままのキミだったのかもしれないね。いつからかキミは、進むべき道を間違えたんだ。世間の闇を知り、怯え、虚像の幸せを求めたんだろう。
 光を求め続けた為に、闇夜へと堕ちた"堕天使"。この表現が、きっとぴったり。
 そして…偽物の優しさで、人の心を惑わし続ける。

 被害者なんだよ、僕は。キミの優しさに騙された、たくさんの人たちの一人。
 でもね…憎む気には、なれないんだ。一瞬だったけど、その優しさに溺れていた間は、少なからず僕も幸せだったから。憎むよりも怒るよりも、僕にはキミが哀れでならない。
 キミの本当の目的を知って、驚くよりも先に恐ろしさを覚えたけれど…

 ——…同時に、大切な人を失う"哀しさ"も溢れたから。

 ——さようなら、僕に優しさをくれた人。

 (闇に堕ちた哀れな天使は、恐ろしいほど優しい"堕天使でした")