二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

【09】巡り合わせと呼ぶのです-03 ( No.145 )
日時: 2011/03/07 18:39
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: uXqk6hqo)



「……で、なんで僕はジャージを着てるんだろう?」
「あったりまえだろ? サッカーするからだ!」

 正論を堂々と述べる政治家のように、円堂は僕を誘ったわけをつらつらと語ってくれた。そのいち、サッカーは楽しい。そのに、俺(円堂)もお前(僕のこと)もサッカーが好きだ。そのさん、サッカーは大勢でやったほうが楽しい。そのよん、こうやって集合してる。そのご、サッカーやろうぜっ! ……理解できないわけでもないけど。なんなのさ! ちょっと勝手すぎるでしょ円堂!

「まあ、円堂を断ると後が怖いからな」

 まるで人事のように——実際に他人事だけど——口元に余裕そうな笑みを浮かべた鬼道は、やや哀れみを含んだ視線をこちらへよこす。豪炎寺も同じような表情だったから、この二人は似てるなーとか思いつつ……やっぱり、僕って可哀想なんだってことを再確認。
 雷門中とサッカーするのは、別にいいんだけど……誘い方に無理があるよね、うん。

「もちろん、サッカーやってくれるよな?」
「……ちょっとだけなら、やっても良いけど」
「よっしゃぁ! さっそく対決だ!」
「うわぁ、ちょ、引っ張るなぁぁぁ!」

 無理やり連行される僕。にこにこしながら走り出す円堂。温度差があるとか言っちゃいけないんだ。でもせっかくだし、楽しんで帰ろーとかポジティブが戻ってきた途端、円堂に尋ねられる。

「そー言えば葵ってさ……」

 あんまりにこにこしてるから、自然と解けていた警戒心。つられて、僕も笑み崩れる。夜桜には、ここまでのサッカーバカがいないから、こういうノリが新鮮で面白いんだ。

「ジュニアチームのとき、FWやってたか?」
「……は?」

 "FW"。チーム内で、相手のゴールに一番近い位置にいる選手を指す。その位置故に、チームからまわってきたボールを決め、得点をするのが主な役割だ。一番目立つ為、花形とも言える。
 僕は一応、小学生のときには、近所のジュニアチームに所属していた。女だから、結構変な目で見られたけれど、それでもサッカーが大好きだった。だから、やめられなくて。結果、努力が実り、レギュラー獲得成功! それなりにチームに貢献できていた、と思う。そのときの僕のポジションは、親戚の叔父さんと一緒の……———

「あおい?」

 顔を上げると、不安そうな円堂がいて。ハッと我に帰る。

「どうしたんだよ……具合、悪いのか?」

 じゃあ休んでもいいぞ、と彼は言う。いまさら、そんなこと言われてもなあ。暗ったい気分を笑い飛ばしてやりたかった。が、打たれ弱い僕に、そんな勇気はこれっぽっちも無い。どうして知っているのか、ちょっぴり気になったけど、深く追求しないことにした。今の僕には、関係ない。とりあえず、やらなきゃいけないことがあるし。

「葵……?」
「円堂、サッカーするんでしょ? だったら早く行かないと……置いてくよっ!」
「えっ!? ちょっ、待てよぉぉぉ!」

 思いっきり、サッカーやっちゃいますか!