二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- The tears which I forgot ( No.164 )
- 日時: 2011/03/31 16:20
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Ph3KMvOd)
ぼんやりと視界が歪む。ああ、俺は本当に弱虫だ。バッドエンドの主人公と自分を重ね合わせて、挙句の果てには、作り上げた悲しみに身を委ねて。そして、泣きじゃくって。誰かに慰めてほしい、なんてさ。
もう、どうすればいいのかわからない。確かに俺は、弱虫だ。悲劇の主人公ぶってる愚か者だ。だけど、悲しみへの浸り方は知ってるくせに、笑顔への帰り道はわかっていない。知らない、いや、忘れてしまった。
じっと自分の両手を眺めてみる。あいつがいたから、今この瞬間があるのに。どうして疑ってしまうのだろうか。あの言葉は拒絶じゃないと何故、言い切れない? 帝国で過ごしたあれだけの時間さえ、何の意味も見出す事ができなかったのだ。
生温かい液体が頬を伝い、そして唇に触れたとき、自虐的な笑みが零れる感覚を覚える。結局、こんなものだ。溢れる涙を拭うことさえ忘れ、壊れた俺は、ただひたすらに笑い続けた。
* * *
罪悪感なんて、これっぽっちも無かった。
自分の心からの願いに素直に従った結果が———"エイリア石"だった。
FF一回戦敗退後。鬼道が帝国イレブンを抜け、俺自身も怪我でサッカーどころじゃなくなって、毎日毎日、白い天井とにらめっこ。静寂が虚しく広がる日々を、病院にて送っていた。こう言うと、普通に療養しているように受け取られるのだろうが、実際は違う。雑音さえ届かない、孤立、隔離された"病室"という名の空間は、たとえ隣に源田がいても、俺には恐ろしく思えた。軽い怪我で済んだ帝国メンバーが時折、見舞いに来てくれたが、面会時間が終了し、ガラガラと閉められるドアの音を聞くと、どうも哀しくなって。気晴らしに窓の外を眺めても、俺に背中を向けている源田が視界の隅に映りこみ、風に散った枯れ葉が、無敗伝説の終わりと重なって、どうしようもない喪失感を抱え込むことになった。そのたびに、怯える俺。
あの日、———不動に誘われ、影山に再会したときは、俺に貼られた"敗北者"というレッテルを引き剥がそうと必死だった。そんな心情の影響も少なからずあったのだが、何より源田がいてくれたおかげで、後悔なんぞ欠片も無かった。
これで、真の強さが手に入れられる! 何とも言えないほど、幸せだった。すべてを失った空っぽの体に、久々に満ち溢れる優越感。
だから、気付けなかったのかもしれない。怪しげな光を放つ、正八面体が映りこんだ、灰色の瞳が、ほんの少し寂しげだったことに。
+ The boy who was pushed ( 2/3 )