二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 見えない症候群-司令塔少年編- ( No.181 )
- 日時: 2011/04/27 15:56
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: ofW4Vptq)
「死にそうなくらい、寒いんだ」
何を言い出すのかと思えば、くだらない戯言で。どうせ、嘘なんだろうと決めつけ、早くこの場を去りたいと願う。ただ、どうしても頭から離れないのは、同じようなことを呟いた彼女の見たことがないくらい切ない横顔だった。
「……それ、で?」
ようやく発する事に成功した言葉は、彼を拒むに等しい言葉で。お前は知らないのだろう。その歪んだ愛情が何故こんな姿に変わったのかを。自業自得という、事実を。お前が早とちりなんてしなければ、見捨てられたと自暴自棄にならなければ。お前の願いも叶ったのだろうし、恋とやらも上手くいったはずだ。
なの、に。
「それがどうしたんだ」
彼女がお前を慕っているのは、誰の目から見ても明らかだった。そんな愛情を拒み、求め、踏みにじったのは自分自身だろう? 俺を恨むのは、俺の視線の先にある姿を疎むのは見当違いだ。早く、気づけ。お前のせいで仲間の輪が、乱れ始めていることに。
アイツが悩み、仲間を想って声を掛ける円堂に、雷門が再度、惹かれつつあることに。ようやく手に入れたのに。お前がアイツを悩ませるから、アイツがまた、俺から遠く離れていくんだ。もう、そんなの、
「……どんなに努力しても、力を手に入れても。アイツは俺の事なんか、見向きもしてくれないんだ」
それは違う。アイツはいつだって、お前しか眼中になかったよ。言葉では円堂を慕っていたかもしれない。が、あの瞳に映っているのは、風のように速いお前だけではないか。自惚れろ、自惚れて早く、その可笑しな考えの呪縛から逃げ出せ。被害者は、お前だけでは無いんだ。
お互い、もう辛いのは嫌だろう?
「もう、どうなったっていい」
嘘吐け。アイツが完璧に円堂の隣にいってしまったら、それこそ生きていけないくせに。バカじゃないのか? と言えない弱い自分が、確かにここにいる。
何故、彼は気付かないのだろうか。自分が犯した、最大のミスに。
「……そうか」
———見えない症候群———
( 都合の悪い嘘なんて、彼に見えるわけないじゃないか )