二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 優しいルシフェル 【イナイレちまちま集】 ( No.20 )
日時: 2010/12/05 17:38
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: ja6QJnOq)

 言い訳を本気で考える。どうしよう、遅刻した理由だよね。目覚まし時計が壊れて…ダメだ、セットしておく事自体忘れてたんだから。母さんがおにぎり作るのにハマってて…何が言いたいんだよ僕は。時間を間違えてた!…それは、先週の言い訳に使ったばっかり。…夜、内緒でDSやってて夜更かししたから。馬鹿正直で良いかもしれない。生命の危機と隣り合わせだけど。
 とりあえず謝っておこうと口を動かした刹那、ピーッとホイッスルが鳴り響く。…あれ?前半は、もう終了なの?

「何で前半終了…」
「時間が早まったの、キャプテンに言い忘れてたんだよ!!」

 MFの橋本が、のほほんとした雰囲気を醸し出しながら、彼なりの早口で言いきった。…僕、悪くないじゃん。誰だよ!連絡網、回し忘れてたヤツは!っていうか、こういう連絡はキャプテンである僕に一番に回ってくる筈じゃあ…

「監督が忘れてたって。最近、物忘れが激しいらしいよ?」
「…人を謝らせたっていうのに、か」

 まさか、自分が悪い事したっていう現実も忘れちゃったんじゃあ…っ!!いけない、いけない。今は、監督の歳と共に現れる症状を心配してる場合じゃないんだ。

「今の得点状況は?」
「一対〇です。先制点は、雷門中に…」

 一人メンバーが足りない状況で、日本一と戦って今だ一失点。…レベル高すぎる気がするんだけど。でも妥当かな。仮にも、少し前までは「FF、もう一つの優勝候補」と呼ばれたレベルだったもんね。

「ゴメン…後半からは、私も参戦するから」

 黒と薄紫を基調とした、控えめなデザインのユニホーム。地味っていう人もいるけど僕は、気に入っているんだ。ある意味では、記憶に残りやすいデザインだし、夜桜中学にピッタリだと思わない?

「じゃあ、後半…挽回していくぞ!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 休憩に入る仲間を横目に、僕は相手ベンチのほうに目をむけた。相手もなかなか疲れているようで、結構いい勝負だったらしい。ふと、オレンジのバンダナをしたヤツと目が合った。こういう場合、大抵の人は目を逸らすだろう。僕だってそうする。けれど…彼は、違っていた。

「お前、夜桜中のキャプテンか?」

 グッと掴まれた左腕。確かコイツは、雷門のGKでキャプテンの…円堂守、だったかな。コクン、と頷くと円堂はあの写真と変わらぬ笑顔を見せた。その瞬間、コイツは円堂なんだと、僕の中で確信が生まれた。

「俺は雷門中サッカー部の、」
「GKであり、キャプテンの円堂守…だろ?」
「へっ?」

 キョトンとした表情。何で初対面のヤツが自分の名前を知っているのか、まだ解っていないんだろう。一応、日本一のキャプテンなんだから…サッカーをやっている人間なら誰でも一度は、聞いた事のある名前だ。だけど彼は、自覚が無いらしい。
 僕も夜桜イレブンを率いる立場の者として、自己紹介くらいは、しておいたほうがいいのかもしれない。まだ、ぽかんと口を開けている円堂に右手を差し出した。

「夜桜中学サッカー部のキャプテン…藤浪 葵。よろしく、円堂と…雷門イレブンの皆さん」

 今となっては、お手の物となった自己紹介。がっしりと握られた右手を確認してから、お礼の言葉も伝えておく事にした。

「僕たちの練習試合の申し込みを受けてくれて、本当にありがとう」

 そう言ってから、とりあえず監督に言われた通りに、即興の笑顔を顔に貼り付けた。