二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- +海穹様リク+ ( No.200 )
- 日時: 2011/05/27 17:00
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: arQenQl7)
- 参照: テスト終わったぜやふー!
——+ 茜色カルテット +——
「有人ッ!」
名前を呼ぶよりも先に、足が勝手に駆け出していた。スカートの裾がひらひらと揺れる。はしたないかな、なんて思ったけれどもう止まれない。少しくらい、良いよね?
下駄箱に寄りかかり、私を待っていてくれたのは有人——帝国学園サッカー部のキャプテンだ。一見、冷たい印象を受ける彼だが本当はとても優しいってことを、私が一番知っている。それに有人は冷たいんじゃなくて、厳しいだけなんだもの。もちろん、人にだけでなく自分にもだけどね。
だって、ほら。今だって、
「走って大丈夫なのか? 弥生」
「ありがとう。でも、大丈夫だから」
こうやってさりげなく、私のことを気遣ってくれる。そんなちょっとした心遣いがたまらなく嬉しくて、そしてこんな優しい人と出会えたことが幸せで、隣にいられる今、この瞬間がたまらなく愛しくて。いつも練習で忙しい彼だから、こんな短い時間でも良い。ほんの少し話せるだけで、本当に嬉しくなる。
有人はいつもサッカーで忙しいから。でも私、知ってるよ? 有人が"サッカー"を言い訳にしないで、私に会おうとしてくれていること。だから尚更、きみに惹かれていくの。どうしようもないくらいに、ね。
じゃあ、帰るか。彼は呟き、ゆっくりと歩き出す。そんな背中を見た瞬間、ふいに笑顔が零れた。
「今日も練習、ハードだったね」
そう話しかけると、ああ、と短い返事が返ってきた。けれど夕陽に照らされたその横顔に、疲れの色は一切見えなくて。むしろ輝いているように見える。本当にサッカーが好きなんだなぁと、改めて思った。
帰り道。いつもだったら有人は、今日の練習についてとか他のメンバーがどうとか、私にもわかりやすいように話してくれる。普段、口数の少ない彼だから、サッカーをやっていないとわからない難しい部分はあっても、聴いているだけで有人に近づける気がするから。サッカー、やってみたい。だけど、こんな身体じゃ、無理だから。
だからせめて、私は有人の一番近くで、彼を応援し続けたい。
そう、思ったんだけど……有人は何も言わず、黙々と先を歩いていく。何かあったのかなと不安になりつつ、私、何かしちゃったかなと別の不安が浮かび上がって。せっかく二人で過ごせるのだから——、貴重な時間だから、居心地が悪いなんて嫌だもの。
「有人……? あの、どうしたの?」
「え、あぁ、大丈夫だ」
明らかに動揺している声。長い時間を共にしているんだもの、それくらいは見抜けるよ。そうでしょう?
じーっと彼と視線を交差させる。ゴーグル越しに覗けた紅い瞳は、あの日と変わらず、美しくて。その瞳の中に私はちゃんと映っているのか、確かめたくなる。
有人、と。ゆっくり名前を呼ぶと、プイっと顔を背けられてしまった。ずきり、ココロのどこかに亀裂が走る。
だけど。
代わりに差し出された大きな手を見て、時間が止まってしまったような、そんな錯覚に襲われた。
「ここなら誰もいないから、」
その後は、口を濁して戸惑う彼。可愛い、なんて思ってしまう。でも——私だってそんなに落ち着いていられなくて。頬がちょっぴり熱い。差し出された手を素直に握ることが戸惑われた。ちょっと指先が触れるだけで、手を引っ込めてしまったりしてそれで——でもやっぱり、しっかりと手を繋ぐ。
手を繋ぐのなんて、何年ぶりだろうか。
でもそんなこと、今は関係無いよね。だって今、きみと私が繋がっている事に違いは無いのだから。
「……有人、」
——大好きだよ。
なんて言ってみたら有人、どんな顔するのかな?
そんな事を想像しながら私は、彼に想いを伝えるために小さく、息を吸い込んだ。
- fin -
テストがようやく終わったので、やっとうpできましたw遅れてしまい、申し訳ないです。しかも駄文。
題名に意味はありません(キリッ 語れないほど恥ずかしいので言えないっ!←
海穹様のリクエストでしたが、本当にすいませんでした;甘くなっていましたか?それ以前に文章として認めていただけるでしょうか?(
もし宜しければ、感想などお聞かせ願いたいです。罵詈雑言ばっちこい!←
ではリクエスト、ありがとうございました^^