二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 あと5cm近づいたら、 【塔風】 ( No.205 )
日時: 2011/05/29 14:46
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: MsIbxfYV)




「どっかーん!」
「うわっ」

 背中にどーんと何かがぶつかる。その正体を俺は知っている訳だが、ここはあえて黙っておこう。どうせ次の瞬間には、眩しいくらいの笑顔で俺の名前を叫び始めるのだから。

「風丸、驚いた?」

 驚くに決まってるだろ!
 そう突っこむと、悪い悪いと平謝りされ。それでも彼女はきちんと謝ってくれているのだから、許すほか無い……と思う。ああ、でも。またそれとは別に、問題発生。かもしれないとか言ってみる。

「……塔子、」
「なんだ?」
「……やっぱり、何でもない」

 ぱっと背を向け、走り出す。待てよー! という威勢のいい声に後ろ髪を引かれる気がするが、聴こえなかったことにして走り続けた。これでも一応、雷門の疾風DFだ。追いつかれるはずがない。追いつかれては、いけない。それでもまだ、止まったらあの笑顔がすぐ近くにある気がして。

 本当の風になりたい。
 そして、遠い遠い異国の地に飛んでいってしまいたい。

 柄にも無く、そう考えた。



   ———あと5cm近づいたら、
          (  どうなるか分かってますよね貴女。  )