二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 墜落リミテーション 【風丸/DE戦後】 ( No.217 )
- 日時: 2011/06/21 18:50
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: kTXrSdgM)
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時間。それは、過去から未来へと限りなく廻り続けるものだと、難しい雰囲気漂う本に書いてあった。それ故、どんなに深い傷でも時が解決してくれる、とも。解決とまではいかないが、癒すことくらいならできるのだろう。根拠など無い。だがしかし、今の自分にすがれるものと言ったらそれくらいしかないのだと、改めて思う。仕方が無いのだ、人間は弱い生き物なのだから。それは、僕も彼も例外ではない。あの、宇宙一のサッカーバカも、だ。
「……部活、遅れるぞー」
「ああ、悪い。先に行ってても、」
「しょーがないなーもう。待っててあげるよ!」
僕ってホント優しい! そう笑顔で告げると、はいはいと呆れたような返事を返された。その横顔が母親を思い起こさせるほど暖かく感じるのは、きっと僕だけではないはず。
「ってゆーか、何さっきから探してんの、きみ」
何気ない言葉。ぽんっと脳内で生まれた疑問をそのまま口にするような軽さで、尋ねた。それが禁句であることに気付くのは、言ってしまった後のこと。「あ、」と無意識に呟く僕に向かって彼は、薄く微笑んだ。その瞳を見て、湧き上がる罪悪感。もう遅いのだろう。彼は、特に迷うような素振りは見せず、淡々と、
「教科書だよ。見つからなくて」
自嘲気味に言葉を選び出す。ここでごめん、と謝ったなら彼はきっと、もっと難しい顔をするのだろうけど。
また、隠されたのか。そんな思惑が浮上し、否定したがる僕に世の現実を叩き込む。同時に、仕方が無いと思ってしまう自分を呼び起こすのだ。別に恥ずかしいことじゃない、それが普通なのだよと。何が普通なのだ、当たり前がこんな現状で良いのか。答えはきっと返ってこない。
ダークエンペラーズと雷門との戦いが終わり、早いこと二週間が過ぎた。謹慎とか反省文とか、そういう処分を受けたことは知っていたけど他の処分は聞いたことがなかった。それが、雷門中サッカー部に関わる人間のみぞ知る暗黙のルールだったから。僕だって勿論、破るつもりはない。
「……そ、か」
でも、慰めるに値する言葉なぞ、僕のボキャブラリーの狭さでは見つけられるはずもなく。
「しょうがない、今日は部活に行くか」
そう無理に笑ってみせる彼の全てに、違和感を覚える。指摘するほどの強さなぞ、持ち合わせていない。何も言えなくて、動けなくて、泣きそうになるほど重苦しい沈黙が僕を押し潰す。でも、彼は——彼等はもっと酷い扱いを受けたのだ。悪いのは、彼じゃないのに。そそのかしたアイツなのに。いや、でも——本当に悪いのは、誰なのだろう?
「あのさ、葵」
不意に呼ばれた自分の名前に、ビクリと肩が大げさに跳ねた。指先が震えている事実が情けない。
「もし、俺のせいでお前に何かあるようなら——」
正論を述べているかのような、そんな雰囲気を纏った彼の重圧に耐えられない僕。もろ、い。そんなことを考えているうちに彼はもう、教室を後にしていて。取り残された僕は、何を考えているのだろう。その言葉の意味? 悔しさ? 犯人探し、責任転嫁? いいや、違う。
「……いけないのは、彼。でも、弱かったのは僕、だよね」
あの日、自分はどれほど酷く醜い言葉を彼にぶつけてしまったのだろうか。それを正義と信じて疑わず、ただ己が思うままに。全力で彼を——、傷つけた。なのに、彼は僕を巻き込みたくないからって。変に優しい部分は、相変わらずだった。
( 俺から、離れてくれ )
当然のことのように告げられた彼のささやかな願いは、弱い僕には到底、悩ましい言葉で。僕はまた、救いようの無い脳内会議に借り出されてしまった。ばぁか、そう素直に告げることができるのは、遠い未来の話なのだろうか。
きりきりと、胸が痛む。
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本当はDEになった風丸さんを責める葵を書く予定だったんだ←
「円堂はそう言ってくれてるけど——、風丸一郎太。貴方が、この事実を忘れることは決して許されない。僕はずっと、覚えておくよ」
どうしてこんな微糖な短編書いてるんだ自分!( ……いつか書き直します。