二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- すまいる、ぷりーず! ( No.218 )
- 日時: 2011/06/10 23:47
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 2PzMw0lr)
- 参照: 改行無しを諦めた←
#
それは、いつもと変わらぬ放課後のこと。
「な、何があったんだよ、豪炎寺……」
「俺に聞くな、鬼道に訊け」
「他人に話題を振るな、俺だって困る」
葵が普段通り部室を訪れると、暗い雰囲気に飲み込まれていたサッカー部。秋も春奈も、理事長の娘さんでも敵わなかったらしい天敵は、意外なことに円堂守——雷門中サッカー部のキャプテンだったのである。
「どうしてこんな、テンション下がっちゃってんの……?」
「わっかんないけど、僕たちが部室に来たときにはもう、こんな状況だったよ?」
「それは、俺と松野が保証する」
よくよく話を聞くと、一番に部室を訪れたのは他でも無い円堂らしい。が、ほとんど立て続けに半田と松野が部室に入ったときには、今の有様。机に突っ伏し、何かをぶつぶつと呟いているような——俗に言う危ない人間状態だったらしい。どうしたものかね、と葵は無意識に呟く。
「でも、今日は朝から元気が無かったよな」
「確かに言われてみれば……」
唸る事しかできない部員達を横目に葵は、そっと円堂に近づくと傍に腰を下ろす。覗き込むようにして円堂を見つめると、その視線に気付いたのか円堂はゆっくりと顔を上げた。相当、へこんでいる。そうとしか言いようの無い表情だった。ぷっと吹き出しかけた葵は必死に笑いを堪え、円堂に尋ねる。
「何か嫌なことでもあったの? 宿題忘れて怒られたとか?」
「……だって、」
潤んでいた幼い瞳が、食い入るように葵に近づき彼女の姿を映し出す。いきなりの行動に驚きを隠せていない葵だが、円堂は特に気にする様子も見せず、「うぅ」と唸った。
「……やっぱり、俺はぁ!」
と叫ぶとまたもや机に突っ伏し、黙りこくってしまった。
葵は数秒黙り、右手を空にかざすと——スパン、と気持ちが良い爆発音を部室に響かせる。あんぐりと口を開く部員達、「いってぇ!」と叫ぶ円堂、満足そうに微笑む葵。がばっと起き上がった円堂に対して葵は、最高ながらもどこか冷めた笑みを見せる。恐怖、この二文字しか浮かばない。
「あんたはどうせサッカーしか能が無いんだから、それ以外はただバカみたいに笑ってて!」
言いすぎ。
誰かがポツリと本音を零す。が、みるみるうちに笑顔に戻っていく円堂の姿を見て、もう誰も、何も言えなくなってしまった。
「葵がそー言ってくれるんなら、そうしてみる……」
「そーそー! "笑う角には福来る"ってね」
サッカーボールを一つ持ち出し、「練習、始めないのー?」とフリーダムに行動する葵を見て、数名はたまらず溜め息を吐き出した。同時に尊敬の念を持つ。たまに不可解な行動を起す円堂を、三秒で立ちなおさせるとは。
「……あいつは一体、何者なんだ」
「とりあえず、解決したから良いんじゃないか?」
「いや、問題はこれだけじゃ……」
困ったように眉を潜める鬼道に、豪炎寺はクエスチョンマークを浮かべる。が、すぐに結論に思い至ったようだ。しかし、とき既に遅し。
「円堂復活料金、今度、奢ってもらうから覚悟しとけよー」
「……頼んだぞ鬼道」
「医者の息子だろ豪炎寺」
「そうかそうか、二人とも奢ってくれるのか有難い」
「どう考えたらその結論にたどり着くのか不思議でならない」
「同感だ」
雷門中学サッカー部。
平和に見えてちょっと危ない、けれども素敵な放課後タイム。
———すまいる、ぷりーず!
#笑顔の安売りなんてそんなこと。
( すまん鬼道、持ち合わせが五百円しか…… )
( ここで裏切るのか、豪炎寺 )
( わーい! 五百円なら駄菓子たっくさん買えるじゃん! )
(( …… ))