二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 優しいルシフェル 【イナイレちまちま集】 ( No.24 )
日時: 2010/12/09 18:29
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: IuHi0dEW)

『さぁ!雷門イレブンVS夜桜イレブンの練習試合、いよいよ後半戦が始まろうとしています。夜桜イレブンはキャプテンの藤浪、ようやくの参戦です!!どのような活躍を見せてくれるのでしょうか!』

 見覚えの無い角刈り頭。雷門中の一年生で、実況する人を目指しているらしい。…あぁ、それで実況をしている訳ですか。邪魔にならなきゃいいんだ、僕には関係無い。
 でも…あんまり変な実況したら、サッカーボールが何処へいくか解らないけど。

「あの人、なかなか実況は上手だったわよ」

 新羅城カレンが…人を褒めてる?あの高飛車なカレンが?…どうやら、あの実況は信じてもよさそうだ。何せ、すぐ人を見くびるカレンが褒めてるんだから。

「…今日は、やる気が入ってるね。どうしたの?カレン」
「…鬼道財閥の跡取り息子には、負ける気がしないわ」

 変な負けず嫌いって事か。カレンも財閥の一人娘だから、何故か負けたくないって事かな。新羅城財閥も結構有名…大きいとこだよね?そこのお坊ちゃん&お嬢さんが戦っちゃうなんて、なかなか見られない試合だな。

「キャプテン、試合始まるぞ!!」

 GKの声が後ろから聞こえた。急いで元の位置へ戻る。そして…ピ—————ッ!!!!!ホイッスルは、鳴り響いた。
 とうとう、僕の日本一への挑戦が始まるんだね…——

「皆、あがれ!!攻めるんだ!!」
「行かせませんわよ!!」

 カレンが鬼道からボールを奪う。女の執念には、天才ゲームメイカーもお手上げか。が、ボールを奪ったのは良いが、雷門の選手たちに周りを囲まれてしまっている。どうパスの指示を出せばいい?

「貰った!!」

 水色ポニーテールの美少女…じゃない、美少年がボールを持ってあがっていく。確か、元陸上部員だっけ。じゃあ足が速いに決まってるじゃん…
 僕たちのパスカットも通用しない…?

「吹雪、あがれ!!」

 豪炎寺にマークを付けておいたせいで、ボールは吹雪にまわった。コイツも伝説のストライカーなんだよね?
 いくら強いからって、怯む訳にはいかない。僕だって皆の力に…なれる筈!

「行かせない…っ!!」
「どうかな?葵さん」

 天使みたいなスマイル…じゃなくって、彼も動きが速い。まるで…"風"みたいだ。確かDFもFWもこなしちゃう男の子だったよね。って、すごい強敵出現じゃん。

「…えっ!?」

 何が起こったのか理解出来ていない吹雪。少し自信が湧いてきた僕。理解しにくい状況だけど、これだけは確実に言える。
 ——ボールは、僕の足元にあるってこと。

「女だからって手加減してると、僕たちには勝てないよ」

 ボールをキープしながら、相手陣地に切り込んで行く。幸い、僕にはノーマークだったからね。それって期待されてないのと同じだけど…まぁいい。ここで見せ付けてやる。キャプテンの意地を…!!

「行かせるか!!」

 茶髪の男の子にスライディングをかけられる。確か…一之瀬一哉だっけ。アメリカ生まれのアメリカ育ち。アメリカンボーイだよね。でも、コイツも必殺技は持っていた筈。…やっぱり油断されてるよーな。
 仕方ないか。遅刻してくるプレイヤーだもんね。ヤル気が見られるか見られないかって言ったら…あぁ嫌だ。聞きたくない。

「…っ!!」
「なにっ!?」

 "フィールドの魔術師"に勝利。ボールは今だ、僕が持っている。…遠くで、「ダーリン、かっこええで!!」という叫び声が聞こえたのは、きっと僕の気のせいだ。きっと。
 とりあえずマークが外れたFWを探す。ラッキーな事になつめ…可愛い僕の後輩、駒野なつめにパスをした。

「なつめっ!!」

 どんどんゴール前に切り込んでいくなつめに、安堵の溜息が零れる。まだ得点した、と決まった訳じゃないけど、成長したなぁ…って。

「よしっ!!来い!!」

 パンっと手を打った円堂。その姿があるGKと重なって、目をこすった。いつの時代にも、似たようなヤツはいるんだな、と再確認。
 その間にもなつめは、シュート体勢に入っていた。

「ナハト・タンツ!!」

 踊るような柔らかな動きでシュートを放ったなつめ。前よりも格段に威力があがっているのが解った。皆、日頃の成果を出してるな〜と感心感心。
 でも相手は…宇宙一のサッカーバカだ。簡単にゴールを許してくれる筈も無い。
 ガッシリと止められてしまった…

「あっ…」
「へへっ!!ナイスシュートだったぜ!!」

 笑顔が眩しい。サッカー、楽しいぜ!!というオーラが辺りに溢れている。嗚呼、正真正銘のサッカーバカだな。
 でも…サッカー楽しんでる奴らに、悪いヤツはいないか。

「折角のシュートチャンスが…」
「ドンマイ、ドンマイ!!次は、絶対に入るから」

 ハイタッチを交わすと、元の位置に戻った。これからどうすれば、このチームと対等に戦えるだろう。僕の脳内は、この課題で一杯になる。爪先でトントン、と地面を蹴りながら右手で顎を支えた。周りの奴等曰く、これは考え事してる時の僕の癖らしい。自分に自覚は無いんだけど。でも、少し反省した。気づいたら、ボールは雷門の奴等に回っていたから。

「葵!!動けっ!!」
「………はい?」

 ふと顔を上げたら、鬼道がゴール前に攻め込んで行くのが見えた。その先には…豪炎寺がノーマークで待機している。このまま行ったら、高い確率で得点されてしまう。
 その事に気づいたのは、鬼道を見た後の三秒後。

「……あ、」

 相手の観察とか、そんな事よりも先に身体が動き出していた。