二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〔イナズマ〕きらきら流れ星〔ちまちま集〕 ( No.46 )
日時: 2010/12/26 18:20
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)


「お腹、空いた〜…」

 空腹で頭がボーっとしてきた。ヤバイ、意識がどこまで持つか…あまりにも空腹が酷くて、気を紛らわす為に空を見上げた。綺麗な青空と純白の雲。見なければ良かったと、後悔する。向こうの方に広がる、もくもくっとした雲が美味しそうでたまらない。どうしても食べ物にしか見えない。そのまま、後ろに寝転がった。ブルーシートをひいただけの地面。石ころが背中に食い込む。痛いけど、空腹をこらえる為だ。我慢しないと。

「葵先輩…玉子焼き、食べます?」
「なつめの分が減っちゃうからいいよ…」
「その割には、目が輝いてるぞー」

 うるさい、と飯島を追い払うと寝るむきを変えた。たとえ玉子焼き一個でも、食べてしまったら止まらなくなる。いこーる、皆から貰わないと耐えられなくなる。結果、仮が出来放題…そんなの嫌だ。
 雷門中の方では、楽しそうな会話が聞こえる。どーせ、マネたちが愛情込めて作ったおにぎりでも頬張ってるんだろう。いいな、マネージャー。僕たちも欲しいけど、受け継がれてきた伝統を破る訳にもいかないし。

「全く…葵は、駄目ですわね」

 カレンの声が聞こえる。言い返す気力さえ失った。

「…これ、仕方が無いから差し上げますわ」
「…は?」

 高級そうな御重が目の前に差し出された。一段まるまると。美味しそうなおかずが、これでもかと詰められている重箱を僕にくれるの…?カレンは、他の段のを食べ放題だし、貰っても支障は無いよね?まさか…まさかカレンから貰うことになるなんて。明日は、天変地異でも起きるんじゃないかな。

「私が仕方なく差し上げるんですのよ?決して私がわざわざ料理長に貴女の分を作って頂いたのでは、御座いませんから。別に中身が貴女好みのおかずであっても、偶然なんですからね!」

 カレンが何やら騒いでいるのを横目に、僕は箸を黙々と進めていた。さすが財閥のお嬢様。高級料亭の味がする。食べたこと無いけど。きっと材料も僕の家では、手が出せない位、お高い物なんだろう。グルメリポーターじゃないから、気の利いた事は言えないけど…

「…うん、すっごい美味しい!!」

 きっと今の僕は、有り得ないくらい"にこにこ"してるんだろーな。もういいや、どーでもいいよ。人に何を思われようと、このお弁当が美味しいのがいけないんだから。

「あ、当たり前ですわ!三ツ星ホテルの料理長の一番弟子に作らせたんですから」

 腕を組んで、一般市民じゃまず有り得ない台詞を華麗に言っちゃってるお嬢様。今回ばかりは、有難く思えた。

「カレンって、葵の事、好きだよねー」
「…百合っ子?」
「違う。多分、葵っていう"人間"が好きなんだよ」

 こんな会話が聞こえた気がしたけど、僕はそれどころじゃ無かった。目一杯の幸福に浸っていたのに突然、声をかけられる。いきなりの事で思わず、エビフライを喉に詰まらせるところだった。

「合同練習、始めようぜ!!」
「…ちょっと空気、読んだほうが良いよ。円堂」

 が、他の部員たちの期待に満ちた視線に耐え切れず、僕は箸を置いたのだった。

「カレン、残しといてよ!僕、絶対に後で食べるから!」
「解りましたわよ。執事に頼んでおくから」

 貰った麦茶を飲み干すと、盛大に溜息をつく。雷門中サッカー部は、お昼ご飯さえ満足に食べさせてくれないのか。でも、折角の機会だし…とりあえず、お互いに利益のある練習に出来るよう、頑張ろう!

「さてと…行きますか!」