二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〔イナズマ〕きらきら流れ星〔ちまちま集〕 ( No.47 )
- 日時: 2010/12/26 22:54
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
第二話【迷子の少女】
辺りは、人、人、人。人しか見えないこの町で、どうしろと言うのだろうか。物売りの商人の声が聞こえる。そういう所を見ると、さすがは江戸の町だと感動した。しかし、その感動を葵に伝える事は出来ない。
「ここは…どこでしょう…」
気づいたら葵と逸れていた。そして、目の前には一軒の長屋がある。大通りにいないと気づいて貰えなさそうなので、裏通りには行かずに広めの大通りで待機していた。
きゅっと着物の袖を掴む。知らない人ばかりのこの町。早く早く、葵に会いたいと桃花は思った。しかし、願うだけで会える程、人生は甘くない。迷っている少女に声を掛けてくれる程、暇な大人はいない。完全に一人きりなのであった。
「どうして迷惑ばかり、かけちゃうのかな…」
今までもそうだった。自分がいるせいで葵さんに迷惑かけてばかりで。今だって、葵さんは私を探しているに違いない。自惚れてるかもしれないけど、葵さんは人を裏切ったりしないんだから。
思わず座り込んでしまった。頭を腕で抱え、ひたすら時が助けてくれるのを待つ。しかし、当てにならないのが現実だ。桃花は、また小さく溜息を吐いた。
「あの、大丈夫?」
「はい?」
突然、光が遮られた。優しい声が自分を呼ぶ。虚ろな目で声の主を見上げると、その人は笑っていた。優しい笑顔だった。不安に駆られている少女にとって、これほど暖かいものは無い。
「具合、悪いの?」
「…連れと逸れたんです。迷子なんですよ」
声の主——歳が近そうな少年が、自分に目線を合わせて屈み込んでいた。
「じゃあ、一緒に探してあげる」
穏やかに微笑んだ少年の手を、迷いながらも桃花は取った。その手は、何処か暖かく…懐かしい気もする。初対面の筈なのに、と思ったが、そんなの今はどうだっていい。桃花にとって今一番、重要なのは…葵と再会できるかどうかなのだから。