二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〔イナズマ〕きらきら流れ星〔ちまちま集〕 ( No.55 )
- 日時: 2011/01/01 23:23
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
〔ぽかぽかストーブ争奪戦っ!!〕
冷たい空気が街を被い、枯れ葉が舞い散る今日この頃。いつの間にか、辺りは"冬一色"に染まっていた。ついこの前まで夏だったのに、時の流れは早いもので。秋は、いつ通ったのだろうか。紅く色づいた紅葉や、黄金色に染め上げられた銀杏を見ていない気がする。
"子供は風の子、元気な子"と言うが、ここまで寒い日に外へ出たがる子供がいる筈も無い。いつもは、天気なんてお構い無しにサッカーをしている三人さえも、今日は"おひさま園"の部屋の中で大人しく冬の救世主の登場を焦がれるように待っているのだ。
「おぉ、寒い…どーして冬は、こんなに寒いんだよっ」
「そんな質問、夏にも聞いてなかった?」
お前は黙ってろ、と晴矢はヒロトの頭を殴る。殴られた本人は、短い奇声を上げるとめっきり黙ってしまった。ヒロトは、晴矢の言葉を素直に聞く人間では無い。何か他に理由があるのだろう。…"寒さ"が一番の理由である事に間違いは無いが。
「あぁぁぁっ!!ストーブ、まだ来ないのかよ…」
ポカッと晴矢の頭が揺れる。先ほどのヒロトの二番煎じでは無いが、晴矢も奇声を上げた。
「一番、暑苦しいお前がそんな事を言うな」
冷静な風介の声が晴矢の頭の上で響く。風介は、後の二人ほど寒がっている様子は、見られなかった。一年を通して豊かな表情に欠けているからかもしれない。切れ長の黄色い瞳が、キッと風介を睨み付けた。
「いきなり殴るなっつーの!!ってか、俺は暑苦しくない!!」
「十分に暑苦しくて見苦しいヤツだろ」
「さっきより悪口増やしただろアンタッ!!」
フイッと顔を背けた風介。いかにも涼しそうな薄水色の髪が、ふわりを揺れた。その平然とした態度が、晴矢に火をつける原因なのかもしれない。
「…まぁ、喧嘩するほど仲が良いって言うしね」
「お前は黙ってろ。話に入ってくるな」
ヒロトの言葉を無理に遮ると、風介はまた目を逸らした。そして、ふと何かを思い出したような表情になる。その一瞬の変化を、ヒロトは見逃さなかった。
「どうかしたの?風介」
言おうか言うまいか、しばらく悩んだ末に風介は口を開く。
「…姉さんにストーブ出しの手伝い頼まれたの、すっかり忘れてた」
今日から出る筈だったストーブ。寒い冬の救世主の登場を、今か今かと待ち焦がれていた晴矢は、ガクッと大きく崩れた。慌てて体勢を持ち直すと、ツカツカと風介に歩み寄っていく。ヒロトは、ただニコニコとその様子を眺めていた。
「…どんだけ大切な事、忘れてるんだよっ!!!」
「なら、晴矢も手伝え」
表情一つ変えずに晴矢を倉庫へ引っ張っていく風介。逃げようとしたヒロトも難なく捕まえた。無表情で行われると恐ろしいものである。
「愚痴愚痴、五月蝿い。とりあえず手伝え」
暴れる二人を引きづりなから、冷える外へ風介は出て行った。