二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

風丸さんとパス練してみたw ( No.65 )
日時: 2011/01/06 17:45
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)


 ポン、ポン、と軽快な音が聞こえる。聞き慣れているけれど、サッカーボールを蹴るこの音が、僕は大好きだった。嗚呼、"だった"って言うと、今は嫌いみたいだね。言い直そう。"大好きなんだ"。
 白と黒。練習で何回も蹴られたから、夜桜のサッカーボールは、土色に荒んでしまっていた。砂利でついた細い傷。果たして、僕たちは何回このボールを蹴ったんだろう。蹴った回数だけ、本当に上手くなれているのだろうか。たまに、不安になる。強くなりたいから。強く在りたいから。

「おーい!行くぞーっ!」

 風丸の声が耳に届く頃、僕はようやく正気に戻っていた。なんでだろーな……僕、たまに病むんだよね。病むって言ったら重過ぎるかもだけど。あ、今の日本語、変だった。

「それっ……!!」

 ポーンと、大きく弧を描いてボールは僕へ飛んでくる。さすが、コントロールもピカイチですな。
 僕も極力、ボールが風丸に向かっていくよう心がけた。初対面同士、あまり打ち解けていない僕等の間には、微妙な空気が流れる。だから僕、社交的じゃないんだってば。
 ふと後ろを見ると、ある意味、可哀想な二人がいた。夜桜のツートップ達。呼吸さえままならない程、疲れ果てているのに……円堂は、疲れ知らずらしい。まだ練習を続けている。お願いだから水分補給くらいさせてやってくれ。

「どうかしたのか?」
「え?いや、その……シュート練習、大変そうだなって」
「あいつ等……休憩、まだ入れてないのか?あれだけやってるのに?」

 一番最初に始めたのが、あの三人だから……いや、しんどいでしょ。あれだけやったら。

「え、円堂……話を聞いてく———」
「よしっ!もう一本だ!」

 声にならない悲鳴が聞こえる。円堂、熱心なのは良いけどさ、もう少し緩くやってこうよ。こっちの主戦力を潰されちゃ、困るからさ。
 短い溜め息を吐くと、隣からも溜め息が零れた。様子を見に来た風丸らしい。表情が暗かった。

「……円堂は、どうしてあんな無茶するんだよ」

 呆れ気味と言うか何と言うか。諦めたようにも受け取れる響きで、彼は呟く。無茶ばっかりしてそうだもんな、円堂って。

「昔から夢中になると止められなくて……声が届いてないんだよ。無視じゃないんだろうけど。頭の中を通り過ぎていくんだよな、きっと。俺たちだけならまだしも、初対面の奴等にもあんな感じだから困る。夢中になるのは、全然構わないんだよ。自分で制御してくれれば問題ないんだ。でも制御できてなくて……俺も必死に抑えるんだけど、効果あるのかなぁ」

 溜まっていたものが、はっちゃけたらしい。愚痴っぽい言葉がズラズラと流れていった。どんだけ溜まってんだよ。発散させないと、いつか爆発するよねー……。定期的に爆発させないと、風丸が可哀想だな。
 そろそろメニューを変えようかと、辺りを見渡す。なんか、鬼道がまとめてくれてたから、任せちゃおうかな。

「あのさ、風丸」

 少しでも良いから、彼に協力しよう。

「僕で良かったら……愚痴、聞くからね」

 雷門中サッカー部を救うつもりで、彼に付き合う事にした。