二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 時代劇物?久々更新!! ( No.78 )
- 日時: 2011/01/12 20:21
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
- 参照: 強化人間って…ヒロトもそうだったじゃn(ry
第八話【宝探しじゃありません】
今まで通ってきた道をくまなく歩いて探す。雷門大橋に差し掛かったところで、ふと葵が呟いた。
「簪が落ちてたら、普通……貰っちゃうよね」
「葵さん。それを言ったら、意味無いですよ」
「まあ、きっと見つかるだろ!」
ずっと地面と睨めっこしていた葵は、とうに厭きてしまったようだ。生憎、お金に困っていないし、見つかる筈も無いからだろう。第一、金目の物が落ちていたとして、素直に持ち主を探すほどのお人好しがいるだろうか。もしかしたら、拾われてしまったのかもしれない。雷門大橋の下、大きな川に落ちてしまったのかもしれない。荷物運びの馬に踏まれて、原型を留めていないかもしれない。そう考えると、この行為が無駄に思えてならないのだった。
「あのさー……もう大丈夫だよ?」
幾ら声を掛けても、二人は熱心に地面を見ていた。罪悪感が増すばかりの葵。もうやめてほしいのだが。
「かんざし〜かんざし〜どこ行った〜」
勝手に歌いながら探す円堂。宝探しでは無いのに。遊ばれているような気もしてきて、虚しくなってきた。が、黙々と探す桃花を見ると、落とした張本人がだらけているのもどうかと思われる。と言うか、桃花が諦めるまで探さなくてはいけないようで。桃花は、意外と粘り強いのだった。こうなると葵の声も無視……流されてしまう。
「痛っ!円堂、前を見てやれよっ」
「悪い悪い!つい夢中になっちゃって」
笑顔で言われても、嬉しくない。心底そう感じる葵だった。
「……あ。豪炎寺ぃ!虎丸ぅ!」
知り合いを見つけたのか、またもやデカイ声で円堂は叫ぶ。もう少し、空気を読んではくれないものか。周りの視線が冷たい。そして怖い。でも、こんな人ごみの中でよく知り合いを見つけられるものだ。皆、同じ顔にしか見えない。
「円堂さん!……って、こんなところでどうしたんですか?」
「ちょっと探し物を……何を探してたんだっけ」
がっくりと膝と付く。円堂、何で今まで地面と睨めっこしてたんだ。桃花は然程気にしていないようだった。と言うか、聞こえているかも解らない。
「僕の簪だよ。お母さんから貰った、簪」
「簪?虎丸、お前が拾ったやつは違うのか?」
「そういえば……そうかもしれませんね!」
諦めていた僕に差し出されたのは、探していた簪だった。
「え……」
どこも破損していない。無くしても大丈夫だ、と言ったは良いが、内心相当焦っていた葵は、ようやく胸を撫で下ろした。
「この為に三人で探してたのか?」
ああ、と返事をしようとして考え込む。最初からこの三人だった訳ではない。虎の屋辺りで一人、置き去りにしてしまったような。
「えっと……少し前まで、いたんですけど、」
桃花も気付いたらしい。罰の悪い顔で葵に助けを求めた。困り果てたのは、葵も同じなのだが。が、円堂は普通の表情で笑う。そして、恐ろしいことを口にした。
「雷門大橋で二人に出会ったんだ!その時から、ずっと三人一緒だぜ!」
葵と桃花、どちらにも"吹雪"の名を口にする勇気は無かった。