二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〔イナズマ〕Je suis inutile〔ちまちま集〕 ( No.85 )
日時: 2011/01/17 18:24
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)


 豪炎寺と飯島の勝敗が目に見えている勝負はなかなか終わらず、気付くと観客は円堂ただ一人になっていた。他のメンバーは、それぞれ自分の課題を克服する為、自主練に入っている。僕は、カレンたちと練習してたんだけど気になって何度も三人を眺めていた。豪炎寺、お前もう飽きてるだろ。飯島も意地張ってないで、負けを素直に認めれば良いのに。そして何故、二人よりも円堂が熱くなっているんだろう。

「葵先輩……大丈夫なんですか?」
「うーん、勝負はついてるから終わりにして欲しいんだけど。飯島のプライドずったずたになるよねー」
「笑いながら言うことじゃないですよね?しかも、私が心配してるのはそっちじゃなくて……」

 なつめの視線の先には、学校の時計。まあ時計を見なくても、空が茜色に染まってきているのはわかる。そろそろ帰らないと、困るのは雷門のほうだ。夜桜から雷門の地区までは、結構遠いから。
 それに僕だって、責任負わされるのはゴメンだからね。

「そだね。時間切れってところかな?」
「と言う事で、あとは頼みましたわよ。キャプテン」
「……こんな時だけそういう扱い?酷くない?」

 カレンの言葉に見送られると、円堂を呼んだ。なんだー?と返事は返ってくるものの、目は全く合わない。当たり前じゃん。こっち向いてくれないんだから。人と話す時くらい、サッカーから離れようよ!

「あのさ、すっごく言い難いんだけどー……良い子は、そろそろ帰らないと」
「……え?」

 やっと振向いた円堂。でも絶対、僕の言葉の意味わかってないよね。口がポカンとしてるもん。ホント、世話の掛かるヤツだなぁ。

「……じゃ、じゃあミニゲームは、」
「結局、できなかったね!残念残念!」
「まったく残念そうじゃないぞ葵っ!うわぁぁぁ……やりたかったのに……」

 なんかすっごいへこんでるんですけど。オーラがどす黒いんですけど。円堂がキャプテンとして機能してくれないんで、とりあえず集合をかけてみた。で、キャプテンらしくお礼の言葉を述べてみたものの……隣が暗すぎて、やる気ガタ落ちなんですけど?

「円堂、せめて笑え」
「……みにげーむぅぅぅ!」

 風丸の努力も空振りで。まず、僕は円堂を立ち直させないといけないらしい。どんだけサッカー好きなんだよ。さすが宇宙一のサッカーバカだ。ま、僕らとのサッカーがそれだけ楽しかったんだ、とでも受け取っておこう。

「あのね、円堂。今日は時間がないから出来ないけど……また今度、その挑戦、受けて立つからさ」

 だから落ち込まないでよ。

「え……本当か!?」
「ああ。約束だよ?我々、夜桜イレブンは……次回、完璧な形で雷門の挑戦を受ける。これでどう?僕、嘘は吐かないから」

 みるみるうちにオーラが輝きを取り戻す。瞳がうるうるしてる。感動しちゃってる感じですか?嗚呼、なんて言うか……わかりやすいヤツ。扱い易いって言うか、小さい子と会話してるみたい。なんかゴメンね、円堂。

「わかった!じゃあ、また今度!」

 その"今度"がいつになるかはわからないけど、がっちりと握手を交わした。僕としては、これで雷門との付き合いは一旦、切れたつもりだった。そう思ってたんだけど……人との繋がりって、意外と切れないもので。

 ———僕の平和な生活は、雷門によって崩されていくのだった。

 そうなるなんて、露知らず、

「うん!またねっ!」

 茜色の世界のなかで、再会を誓っちゃったりしてる僕がいた。